☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第1回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ この物語を書く前に。 この話は、主人公などの名前以外はすべて”事実”です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <目次> 1、創刊にあたって 2、「借金は身を滅ぼす」の人物紹介 3、本編(1996年4月〜1996年5月) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <創刊にあたって>  はじめまして。このメルマガは「借金をしている人」「借金を考えている人」 たちに是非読んでいただきたいです。 というのも、作者である私は「借金によって身を滅ぼした1人」だからです。 この「メルマガ」は「1996年4月」から物語がスタートします。 最終回は「2002年5月」です。 この「7年間」に作者は、「400万円」を超える借金をしました。 そして、最終回いったいどのようなことが起きるのか? 作者である私は今どこからこの「メルマガ」を書いているのか? すべては最終回「2002年5月」で明らかになります。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <人物紹介>  名前 :松下一樹(仮名)  生年 :1976年生まれ   地元 :広島  経歴 :中学・高校と学業の成績は常に上位。      部活はバスケット。      大学は仙台の国立大学。       〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <1996年4月> 地元・広島から大学入学のため仙台に出てきた俺・松下一樹(仮名) 大学の入学式も無事終わり、友達も何人かできた。 大学は「某国立大学の経済学部」 アパートは4階建てで、部屋は3階の角部屋。 ・家賃:55,000円(共益費込み)/月 最初の1ヶ月は、街と大学に慣れるためにバイトはしなかった。 ・親からの仕送り:120,000円/月  ※ここから家賃を払う。 ・奨学金:40,000円/月 この頃はまだ「ポケベル」が全盛である。 (携帯を持ち出すのはまだまだ先) ・ポケベル代:約3,000円 <5月> GWが終わった頃、バイトを探すために某アルバイト紙を買う。 「まかない」がでるアルバイトが希望だったので、近くの「そば屋」に電話する。 店の人:「ごめんね。もうバイト決まっちゃたんだよね」 またアルバイト紙を見てみる。 すると、アパートから5分くらいの「パチンコ屋」でバイトを募集していた。 私:「すいません。バイトを募集していますか?」 パチンコ屋の人:「じゃあ、今週の土曜日に来てくれる?面接するから」 私:「はい、分かりました」 結局、このパチンコ屋で大学時代の3年半バイトをすることになる。 ・バイト代(パチンコ屋):1,000円/時間  ※月で大体10万円前後になった。 この頃は、大学のバレーボルサークルにも入り、大学生活を楽しんでいた。 しかし、一人暮らしは暇な時間が多い事実にも気づく。 そして、借金の最大の原因である「パチスロ」の世界にはまっていく・・・。 <1996年5月現在>  ・借入先:0件  ・借入金:0万円  ・毎月の支払い:0円 ========================================================================= ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第2回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1996年9月> 下にあるのは9月の私の通帳明細。 ----------------------------------------------------------------       お支払い   お預かり    差引残高 08.09.12         250,000     271,263 08.09.13  50,000             221,263 08.09.14  30,000             191,263 08.09.14  20,000             171,263 08.09.15  40,000             131,263 08.09.16  20,000             111,263 08.09.17  70,000             41,263 08.09.17  25,000             16,263 ---------------------------------------------------------------- 9月17日の時点で気づく。 「あっ、大学の学費を使ってしまった!!」 9月12日に大学の学費25万円(半年分の学費)を通帳にいれたのだが、 1週間も経たずに残高が2万円を切っている。 しかも、すべてパチスロ(パチンコも少々)で負けていた。 「どうする?」 不安になる。 いや、不安というよりも、先が見えない。 「おれにどうやって25万円もの大金を稼げるんだ?」 学費の銀行引き落としは、9月27日。 リミットはあと「10日」 人生で初めて「お金の工面」をする。 1、パチンコ屋のバイト代が25日に入る。→10万円 2、ゲームやCDなどを売る。→2万円 ※25万円−(10万円+2万円)=13万円 あと「13万円」・・・。 頭の中をよぎる、「サラ金」の3文字。 「でも、おれ学生だし。学生は借りられないんだよな」 その時アパートのポストに入っていた1枚のチラシ。  『学生・主婦・フリーター 50万円まで審査無し』 「学生でも借りれるんだ」 このときは一瞬これを「神様」だと思った。助かったと思った。 しかし、僕は「地獄の入り口」に立っていたのだった。 <1996年9月現在>  ・借入先:0件  ・借入金:0万円  ・毎月の支払い:0円 ===================================================================== ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第3回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1996年9月・PART2> 1996年9月。 大学の学費をパチスロで使ってしまい、途方に暮れる俺。 「13万円」がどうしても今週中に必要だった。 そして、ついにどうしようもなくなり、「借金」という安易な考えにたどりつい てしまう。 そんなとき、1枚のチラシが目に入る。  『学生・主婦・フリーター 50万円まで審査無し』 「助かった」と思い電話する。 俺:「すいません、チラシを見たんですが・・・」 男:「(無愛想に)何歳ですか?」 俺:「20歳です」 男:「学生?」 俺:「はい」 男:「いくら借りたいの?」 俺:「できたら15万円くらい・・・」 男:「(かなり無愛想に)今まで消費者金融とかで借りたことある?」 俺:「いえ、1度も無いです」 男:「じゃあ、今から動ける?」 俺:「あっ、はい。大丈夫です」 男:「どこにいるんだっけ?」 俺:「仙台です」 男:「じゃあね、印鑑と健康保険証を持って、今から言うところに行ってくれる?」 俺:「分かりました」 男:「着いたら、もう一回電話ください」 俺:「着きました」 男:「そこに『武富士』さんあるでしょ?」 俺:「はい」 男:「今、こっちでデータを書き換えておいたので、そのまま行ってもらえればお金    を借りれますので」 俺:「えっ?お金を貸してくれるんじゃないんですか? 男:「いや、違いますよ。借りれる所を紹介するだけですよ」 今考えると、これは「紹介屋」といわれるものだった。 結果的に「30万円」の限度額を勝ち取る(?)ことができた。 そして、その「紹介屋」に「5万円」を振り込んだ。 「ま〜、学費も払えたしOKとしよう」 かなり簡単に考えていた。 しかし、「武富士」さんと6年も付き合うとは夢にも思っていなかった・・・。 そして、加速度的に借金は増えていく・・・。 <1996年9月現在>  ・借入先:1件(武富士)  ・借入金:20万円  ・毎月の支払い:15,000円 =========================================================================== ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第4回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1996年10月〜1997年1月> 9月につくった「借金20万円」。 毎月4万円ずつ返していくと、4万円×5ヶ月=20万円。 「完済」するのである。 「なんだ、簡単じゃん」 しかし、実際は簡単ではなかった。 10月は、がんばって「4万円」を返済した。 11月は毎月返済額「1万5000円」。 12月も毎月返済額「1万5000円」。 20万円−4万円−1.5万円−1.5万円=13万円。 う〜ん、順調だ。しかし、これには続きがある。 13万円+3万円+3万円+1万円=20万円 返済した分(7万円)を、12月にお金に困って借りてしまったのだ。 結局、12月になった時点でスタートに戻ってしまっていた。 「ま〜、大丈夫でしょ。12月・1月は大学も冬休みだし、バイトの時間を増や  そう!!」 本当に12月・1月は働いた。 パチンコ屋にクリスマスも正月も無い。逆に「稼ぎ時」なのである。 12月:200時間(バイト時間)  1月:150時間(バイト時間) (200時間+150時間)×1,000円(時給)=35万円(バイト代) 「35万円」は学生としてはかなりの額だ。 にもかかわらず、お金は無かった。 借金も返済できていなかった。 「パチンコ屋」で働いた金を「別のパチンコ屋」に捨てていた・・・。 でも、この時期は楽しかった。 大学の友達とコンパしたりスノーボードに行ったり。 「借金」とは上手く付き合えると思っていた。 しかし、1997年は「人生で最悪の1年」になっていく・・・。 <1997年1月現在>  ・借入先:1件(武富士)  ・借入金:20万円(全く減っていない)  ・毎月の支払い:15,000円 ====================================================================== ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第5回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年2月〜1997年3月> この頃は大学のテスト期間中のため、パチンコ屋のバイトがあまりできないでいた。 当然、バイト代もいつもの半分くらい(4万円)しかもらえず、生活費が逼迫し、 家賃も滞納気味だった。 財布の中には、限度額いっぱい使っている「武富士」のカードが1枚入っている。 なんの意味も無いカード。 もはや「返済」の時にしか使わないカード。 「もう1枚カードを作ろう」 「今度は限度額の中でお金を出し入れできるようにしよう」 今考えると、そんな自分への言い訳を何度も考えていたかもしれない。 そして、手に入れた2枚目のカード、「DCキャッシングカード」。 このカードを簡単に説明する。 これは、毎月限度額5万円借りて、借りた分は翌々月1回払いの「キャッシング サービス」と、毎月1万円支払う「ローンサービス」(限度額10万円)の二つ のサービスが利用できる。 カードのデザインがちょっとかっこ悪いが、簡単に手に入ったので良かった(助 かった)。 しかし、カードが届いた日、ATMであっさり5万円借りた。 その5万円はパチスロであっさり飲まれた。 いつものパターン。 「支払日は翌々月だから、まっ、いいか」 3月になると、また5万円借りることができた。 そして、またパチスロに投入する。 朝早く起きてパチスロに行くのが、すごく楽しかった。 朝8時に起きられないと思うと、夜寝ないで行ったこともたびたびあった。 でも、そのときは楽しかった。 しかし、負けた日はすごく憂鬱になり、 「もう、パチスロはやめよう」 何万回も思った。紙にも書いた。 でも辞められない。 次の日になると、パチンコ屋に行きたくてしょうがないのである。 「病気」 この「DCカード」が「毎月5万円の返済」という重い障害だった、と気づい た時、なんとなく将来が見えなくなっていた・・・。 <1997年3月現在>  ・借入先:2件(武富士,DCカード)  ・借入金:30万円  ・毎月の支払い:65,000円 ======================================================================== ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第6回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年4月> 4月になり、無事に2年へと進級した私。 大学2年生になり、なにかが変わった? いや、何も変わってなかった。 借金が「30万円」に膨らんだことと、好きなものが2つ見つかったことぐらいか。 1つ目は、「ビリヤード」。 大学にはほとんど行かず、朝からビリヤード場にいりびたっていた。 ずっと遊んでてもお金をあまり使わないですむので、金の無い自分にはピッタリの遊 びだった。 そして、上手くなるにつれて女の子にモテるような気がしてた。 でも・・・。 もう1つ目がダメだった。 「風俗」 最悪ですね。 「ギャンブル」に「風俗」。 広島から仙台まで来て、いったいなにをしているのか。 親が知ったら泣きますね。 毎月仕送りをして、学費まで払って・・・。 まさかこんなことをしているとは夢にも思ってないはず。 だが、その頃の私の生活は、 「ビリヤード」→「パチスロ」→「パチンコ屋のバイト」→「風俗」 この繰り返し。 「パチスロ」で勝った日は、 「ビリヤード」→「パチスロ」→「パチンコ屋のバイト」→「風俗」→「風俗」 みたいな日もありました。 これで借金を返せるわけがないですね。 返す気が全く無い生活態度です。 でも、「なんとかなるんじゃないかな」 とても安直に考えてた。 『自己破産』『多重債務』『整理屋』・・・ 自分には一生関係無い言葉だと思ってました。 そうだ!! 今月もしっかり「DCカード」で5万円借りてます。 結局、「DCカード」は更新が不可になり、カードが使えなくなる日まで毎月借りて ました。  60ヶ月(5年)×5万円=300万円 5年間で「300万円」が行き来してたんだな〜って思うと、なんとなく感慨深いです。 <1997年4月現在>  ・借入先:2件(武富士,DCカード)  ・借入金:30万円  ・毎月の支払い:65,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第7回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年5月> 5月は金回りがよかった。 理由は簡単。 パチスロが勝ちまくったのである。 何気なく座った台が大爆発で大勝ち。 負けた日でも、1万円の負け(これは負けにならない?) この頃の台は、勝つ時は本当に10万クラスの勝ちも結構あった。 この時期、私が打ってたのは、今はなき「大東音響」の台。 (知っている人はすぐ分かりますよね?) 朝から並んで打ってたのは、今思うとこの台くらいです。 3,000円で80,000円の勝ち → 60,000円の返済。 2,000円が70,000円 → 50,000円の返済。 この頃だけですね、1日に2回返済したのは。 20万円あった「武富士」の借り入れが、一瞬だが90,000円になりました。 「いける!!」 「あと9万じゃん。楽勝〜!!」 ただここで大きな問題があった。 返済した11万円は、いつでもATMでキャッシングできるのである。 この11万円を、いつでも引き出すことができる「貯金と同じようなもの」と勘違い してしまうのである。 貯金が無くても、消費者金融の限度額に余裕があると、とても安心した。 逆に、どうがんばってもお金の工面ができないときは、すごく不安になる。 そして、こう思うのである。 「もう1枚、カード作れないかな?」 5月は本当に借金をしないで過ごせた。 しかし、それは「たまたま」パチスロで勝ったからである・・・。 <1997年5月現在>  ・借入先:2件(武富士,DCカード)  ・借入金:14万円  ・毎月の支払い:65,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第8回 <1997年6月〜7月> みなさんはどうやって、たくさんある消費者金融から借り入れ先を選んでますか? やっぱり「認知度」がある会社ですか? 毎日テレビでCMをやっていますね、「アコム」「武富士」「アイフル」など。 この頃のわたしは、当然、「金利の高さ」や「取り立ての悪さ」なども詳しくは分 からず、「テレビでCMをやっているところは、安心なんだな」と簡単に考えてい ました。 「アコム」か「アイフル」だな。 この頃、ついにお金が回らなくなってきた。 食費に加え、服代、遊ぶお金、家賃、それに大学の教科書代が結構厳しかった。 どう考えても、あと5万円が足りない。 「延滞」だけは絶対に嫌だった。 実家に連絡がいくのだけは避けたい・・・。 「よし、もう1社借りよう。限度額を5万円にして、5万円だけ借りよう。あとは なんとか、バイト代が入るまでがんばればいいし・・・」 借りるなら・・・、思い当たるのは「アコム」か「アイフル」だった。 よし、どっちかだな。 なぜか選択肢は二つしかなかった。 そして、家の近くにある「アイフル」になんとなく決めた。 「たぶん、貸してくれるでしょう」 かなり楽観的に考えていた。 「アイフル」の支店に行く。 「学生」だと貸してくれないので、「フリーター」として契約をした。 アイフル:「おいくら入用ですか?」 わたし :「5万円ほど・・・」 アイフル:「え〜とですね、30万円まで限度枠をお作りしますね」 わたし :「あっ、・・・、はい。お願いします」 というわけで、限度額30万円のカードが1枚手に入った。 一応、まだ5万円しか借りていないが、残り25万円を借り切るまで、そんなに時間 はかからなかった。 <1997年7月現在>  ・借入先:3件(武富士、DCカード、アイフル)  ・借入金:45万円  ・毎月の支払い:71,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第9回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年8月> 大学2年のお盆に実家に帰りました。 1年ぶりの帰郷です。 本当、久しぶりでした。 地元の友達と遊んだり、親の家庭料理を食べたり・・・。 高校時代とは違い、夜に酒を飲みに行って、かなりおそくまで遊びました。 友達も大学に進学したのもいれば、もう社会人になって働いているのもいて、色々 話をして盛り上がりました。 でも、もちろん借金の話はできません。 みんなからは「おまえは俺らの学年でも1番の出世頭なんだから、期待してるよ」 と、言われたら、絶対言えないです。 「おれ、パチスロのやり過ぎで50万近く借金があるんだ」 絶対言えないです。 「借金をしていること」は、今まで築いてきた「自分」を全て否定するものなのです。 親も、久しぶりに帰ってきて少し大人になっている子供を見て、嬉しそうでした。 近所にも「せがれが仙台から帰ってきてね」なんて、言っているのを見たら・・・。 「おれ、パチスロのやり過ぎで50万近く借金があるんだ。だから、少しお金を貸して」 言えないです。 1週間後、何事もなかったように地元・広島から仙台へと旅立ちました。 仙台に着いたその日、実家からダンボール一杯に大量の食料品が届きました。 「とりあえず、これだけあれば食べ物には困らないね」 母親からのメモが一緒に入ってました。 おそらく、人間にはやりなおすきっかけが何回かあるのでしょう。 今回の帰郷はまさしくその一つだったと思います。 でも、わたしはそれに気づかなかった。 「まだ、大丈夫。大丈夫」 なぜか自信だけはありました。 そして、また「ギャンブル」と「借金の生活」が始まりました・・・。 徹夜明けに消費者金融のATMに行って金を借りて、パチンコ店に並ぶ・・・。 負けたら、とりあえず大学に行って友達と飯を食って、バイトして・・・。 最悪の生活です。 ちなみに、先月作った「アイフル」から、地元に帰る旅費として10万円借りています。 <1997年8月現在>  ・借入先:3件(武富士、DCカード、アイフル)  ・借入金:55万円  ・毎月の支払い:81,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第10回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年9月〜1997年10月> 「自転車操業」。 借りて返す日々。 この時期、毎月の支払いが9万円近くになっていた。 かなり厳しい。 理由は、「DCカード」の『1回キャッシング』。 毎月の借入限度額が5万円で、翌々10日に全額返済する。 たとえば、6月に5万円を借りると、7月にはもう5万円借りられる。 そして、8月10日に、6月分の返済額・5万円を返すと、8月15日にはもう 5万円借りることができる。 5年近く、この繰り返しだった。 この「自転車操業」が終わるとしたら、次の二つしかないと思ってた。 (1)どこかの時期で「DCカード」から借りるのをストップする。 (2)返済が滞り、カードが止められる。 結局、私は(2)でした。 武富士などの消費者金融と比べて、信販系の場合、催促(さいそく)が少し遅い。 例えば、期日に返済できない場合、その10日後くらいに催促の「はがき」が来る。 そして、時を同じくして電話もかかってきます。 それが、消費者金融の場合、1日でも遅れるとすぐに電話がかかってきます。 「どうなってるの?」 「返済日ですよ!!もしかして、返さないつもり?」 ってな感じです。 胃が痛い。 さらにもっと大きな問題は、「この返済が遅れたという情報が消費者金融全体に広まる」 ということです。 最悪、武富士で返済が遅れたにもかかわらず、アイフルから借りることができなくなる ことがあります。(アイフルにはきちんと返済していても) そして、また別の消費者金融から借りる場合も、この「返済遅れ」が原因でカードが作れ ないことがあるのです。 びっくりしますよ。 某消費支社金融の無人契約機でカードを作ろうとした時、 声:「今まで、延滞が遅れたことはありませんか?」 私:「(本当はあるのに)はい、ありません」   <数分後> 声:「申し訳ございません。松下様、こちらでお調べしたところ、1度お支払いが延滞    したことがあると記録されているのですが?」 私:「(とぼけて)あっ、そうだ。すいません、1度ありました」 声:「もうしばらくお待ちください」   <さらに数分後> 無人機の画面に『申し訳ございませんが、今回は見遅らさせていただきます』の文字。 情報は流れてますよ。 すべて順調に返済がいってればいいけど、どこかでつまずくと一気に崩れます。 今までいくらでもお金を貸していた所が、一瞬で貸すのをやめ回収に動き出します。 そして、その時期「自転車操業」に陥っていると、100%OUTです。 仕事も手につかなくなります。 「合法的な犯罪」とか、「ブラックの方でも必ず融資!!」に目がいきます。 私が言うのもなんですが、こうなったら、もう一般社会人としてダメですね。 ここで一句。 「今思う お金は自分で 稼ぐもの」 <1997年10月現在>  ・借入先:3件(武富士、DCカード、アイフル)  ・借入金:60万円  ・毎月の支払い:81,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第11回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年11月> よく私は悩んでいた。 「なんでだろう?」 「なんでお金が無いんだ?」 この当時の私の1ヶ月の生活費はこんな感じだった。 ・親からの仕送り:10万円 ・日本育英会の奨学金:5万円 ・パチンコ屋でのバイト代:約10万円 合計:25万円。 「どうして、毎月25万円のお金があって、借金をしなければいけないの?」 普通に考えて、毎月の家賃が5.5万円。食費が6万円、遊興費を5万円としても、 合計17万円前後だ。 「あれ?ってことは、毎月8万円くらい貯金できるじゃん?」 それが、毎月5万円くらい借金が増えているのだから、いったいどんな生活だった のか・・・。 大学4年間、毎月8万円貯金をすれば、卒業時には400万円近くの貯金があった はず。 しかし、逆に私は卒業時に300万円近い借金を作っていた。 この差はいったいなんなんだ? 答えは簡単。 「ギャンブル」 もし、今、私が大学1年生に戻れたら絶対「パチンコ・パチスロ」はやらない!! 絶対やらない!! 100%やらない・・・。 でも、おそらくやるのである。 そんな簡単にギャンブルから手を引くことができたら、借金を400万円も作らない。 「ギャンブル中毒」 この言葉だけだとピンとこないが、次の項目に当てはまったら「ギャンブル中毒」の 可能性があります。 1、ギャンブルの後、強い自責の念にかられたことがる。 2、オケラ(全くお金が無くなる)までギャンブルをしないと家に帰れない。 3、ギャンブルのために、物を売ったことがある。 4、ギャンブルの為に、会社・学校をさぼったことがる。 5、ギャンブル資金を借りたことがある。 さあ、どうですか? ちなみに、私は全て当てはまってました。 私は「重度のギャンブル中毒」です。 <1997年11月現在>  ・借入先:3件(武富士、DCカード、アイフル)  ・借入金:65万円  ・毎月の支払い:81,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第12回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年12月> 「金銭感覚」が麻痺してませんか? わたしはコンビニに行ってもあまりモノは買わない。 おそらく2,000円も使うと、「ちょっと買いすぎたかな?」と少し後悔する。 家にいても、できるだけ電気は使わないようにコンセントをこまめに抜く。 なのに、なぜギャンブルをする? 「1万円」をパチンコで使うのは簡単だが、「1万円」を体を使って稼ぐのは大変 なことだ。 この頃、借金の支払いが近くなる月末には、よく日払いのアルバイトをしていた。 「引越しの手伝い」「線路の枕木(まくらぎ)直し」「工場の清掃」「工事現場の 手伝い」など。 1日8時間くらい働いても、6,000円くらいにしかならない。 2日働いても「12,000円」。 それをパチンコでわずか30分くらいで使ってしまう。 「金銭感覚」が麻痺してませんか? 1度落ち着いて自分の状況を考えてみましょう。 ○現在の所持金は? ○次の給料日まであと何日ある? ○家賃や水道代・電気代・カードの支払いは大丈夫? さあ、どうですか? この段階で全くお金が無い人は危険です。 当然、生活費(食費を含む)も必要ですね。 「まあ、お金が無くてもなんとかなるでしょう」と思わないでください。 そういう人はあと数ヶ月で身動きができなくなります。 1度、サラ金からお金を借りずにがんばってみましょう。 1日1,000円あれば生きていくには十分なはずです。 借金が無い生活を考えてみてください。 楽しいと思いませんか? 支払日に苦しまなくてもいい生活。 「本当に胃が痛い」「眠れない」・・・。 この頃のわたしは「なんとかなる」と、とても楽観的に考えていた。 今思うと、この時期に一度でも我慢をしていれば、人生は変わっていたはず。 <後悔しても遅い> <人生は後戻りできない> そして、1997年12月末。 あの「消費者金融」と契約するのである。 <1997年12月現在>  ・借入先:3件(武富士、DCカード、アイフル)  ・借入金:65万円  ・毎月の支払い:81,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第13回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1997年12月 PART2> 「♪♪ラララ、無人く〜ん、ラララ、無人く〜ん、ララララ♪♪」 そうです。 1997年12月某日、ついに「アコム」と契約しました。 この頃は、「なぜ借金をするの?」と聞かれたら、「お金が無いから」と簡単に 即答したでしょう。 それにしても、あまりにも簡単にカードが作れちゃう。 無人機の前に座って、申し込み用紙に名前や住所、家族構成などを書く。 それを無人機が回収してしばらく待つ。 待ち時間は各消費者金融によって長短ありますね。 以前、「アエル」という消費者金融の無人契約機に行ったとき、『ご意見を書い てください』というノートが設置してありました。 契約書に記入し終わってから、審査結果を待っている間にそのノート読んでみる と、同じようなメッセージが・・・。 「審査時間が長い!!いったい何時間待たせるんだ!!」 「1時間待たせて、『今回は見送りさせていただきます』は無いだろ!!」 「まじで?1時間も待つの?」と、不安になる私。 結果、本当に1時間くらい待って、審査はNGでした。 それに比べてアコムは早かった。 やはり会社の規模の問題なのかな? 結局、限度額20万円のカードを作ることができました。 無人機からカードが「ニュ〜」って出てきた時、本当に嬉しかった。 なんか「勝負に勝った!!」って感じ。 でも、本当は着実に「人生の敗者」の道を進んでるんだけど・・・。 でも、その時は、これで正月を楽しく過ごせるとすごく安心しました。 生きている中で「お金」さえあれば、最低限の幸せは感じることができると思い ます。 逆に、財布の中に現金が無いと、すごく不安になります。 どこに行くにしても、何かをするにしても「お金」が無いと何もできません。 そのために借金をしてでも現金はあったほうがいいのか? もうすぐ、私は「借金地獄」という泥沼に落ちていきます。 <1997年12月現在>  ・借入先:4件(武富士、DCカード、アイフル、アコム)  ・借入金:75万円  ・毎月の支払い:91,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第14回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年1月> 1月1日。 今年は実家に帰らずに、一人で正月を迎えた。 深夜、近くの神社へお参りに行く。 「今年は、ギャンブルで勝ちますように」 そのまま朝まで起きて、いつものようにパチンコ屋に行く。 そういえば、昨日の12月31日もパチンコ屋に行っていたな。 バイト先(パチンコ屋)の店長と、仕事が終わった後よく飲みに行った。 色々と話をした。 女のこととか、学校のこととか、友達のこととか、将来のこととか・・・。 でも、「借金」のことだけは話せなかった。 「借金」のことを話すと、自分の全てを見られるようで怖かった。 親しい人に「おまえは借金をしている情けない男」と見られるのが嫌だった。 今までと同じ付き合いができなくなるんじゃないか。 「国立大学に通い、将来は一流企業に就職する男」 自分で勝手に貼った「レッテル」をはがすのが怖かった。 「国立大学生」という看板をとったら、何も残らない俺・・・。 本当は「借金まみれのギャンブル中毒」なのに・・・。 今思うと、このギャップに自分で苦しんでいたのだろうか? 自分を周りの人に解放することができれば、もっと早い段階で対処法が見つ かったかもしれない。 1998年。 1月1日から「パチンコ・パチスロ収支報告書」なるものを作った。 いつ、どこで、なんの台に、いくら投資して、いくら勝った(負けた)かを 記入することにより、お金の流れを把握しようと考えた。 <パチンコ・パチスロ収支報告書> 日付   投資   回収 1月1日 35,000円   0円 1月2日 20,000円   0円 1月3日 22,000円   0円 1月4日 13,000円   0円 1月5日 20,000円   0円 ここで、この報告書は終わっている。 5日間で「11万円」も負けたら、どうでもよくなる。 これで、「アコム」も限度額いっぱい借りたし、また次のカードを作らないと いけないな。 「今度も無事、カードが作れますように」 <1997年12月現在>  ・借入先:4件(武富士、DCカード、アイフル、アコム)  ・借入金:85万円  ・毎月の支払い:96,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第15回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年2月> 調子がいい。 全てがうまくいく。 大学の試験も順調で、予想通りに「単位」が取れた。 ギャンブルの調子もいい。 1月の不調が嘘のように勝ちまくる。 負けたときでも、1万円の負けで終わる。(こんなのは負けの内に入らない) 2月が終わった時点で、2月の借金の支払いをして、さらに10万円近く残っ ていた。 そこに、パチンコ店でのバイト代が10万円近く入る。 「金持ちじゃん!!」 でも、本当は金持ちではない。 借金の総額が「80万円」あるのだから、有り金全てを返済にまわしても、 まだ借金は残る。 ここで「よし、返済にまわそう!!」とは全く思わなかった。 現金で「20万円」持っていれば、なんでもできると思った。 「就職活動も始まるし、パソコンを買おう」 10万円くらいで買えないかな? 電気屋に見に行くと、欲しいと思ったパソコンが15万円近くした。 「ま〜、1回買えば5年くらいは使うだろう」 (今考えると、本当にパソコンが必要だったのか・・・) 「でも、現金で買ったら、5万円しか残らないし・・・」 ローンで買えないかな? 大学の生協で実施していた「JCBの学生カード・即日発行」に申し込んでみる。 なぜかすんなり通った。 (信販系とサラ金系の情報機関が違うため、信販系のほうだとまだ私は<キレイ> だった) しかも、「5万円のキャッシング枠」付き!! この「JCB」のカードで15万円のパソコンを買った。 毎月、1万円の支払い。 1万円の支払いなんて、痛くもかゆくも無かった。 (このあたりが既に金銭感覚が麻痺していたのか・・・) 実際に私を苦しめたのは「5万円のキャッシング枠」の方だった。 これは「DCカード」と一緒で『翌々月に一括返済』 そのため、最悪「5万円」の返済が回ってきた。 「DCカード」と「JCB」を限度一杯の5万円をそれぞれ借りていると、 「10万円」の支払いになる。 そして、3月。 勝つ時があれば、負ける時もある。 手元にあった20万円はあっという間になくなった・・・。 そして遂に、月額の支払いが「10万円」を超えた。 <1998年2月現在>  ・借入先:5件(武富士、DCカード、アイフル、アコム、JCB)  ・借入金:95万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:106,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第16回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年3月> 月末の支払いが逼迫(ひっぱく)してきた。 毎月月末に3件の支払いがある。 1、武富士・・・15,000円 2、アイフル・・16,000円 3、アコム・・・15,000円     合計:46,000円。 近くの駅前には、消費者金融が集中して入っているビルがあった。 まず、1階の「アコム」で15,000円を返済する。 すると、借入可能額が「10,000円」くらいできるため、そこで限度額いっぱ い借りる。 そのお金と手元にあるお金を足して2階の「武富士」へ。 そこでも同じように15,000円を返済して、限度額いっぱい借りる。 (ここでも10,000円くらい借りれる) そして、3階に行って「アイフル」を返済して、また限度額いっぱい借りる。 すると、返済を3件終えて手元に「10,000円」くらい残るのだ。 これを軍資金にパチスロへと向かうのである。 もう既に「自転車操業」の兆しが見えてきていた。 これを繰り返している限り「元金」は全く減らない。 しかも、返済をしたその場で限度額いっぱい借りるのだから、消費者金融にとっては 「好ましくない客」→「かなりヤバイ客」に見られていたのではないか? ※「DCカード・キャッシング」の支払い「50,000円」は月始めのため、パチ ンコ屋のバイト代でなんとか返済ができていた。 ここで問題なのは、「生活費」という概念が全く存在しなくなっているということ。 手元にあるお金で飯を食い、お金がなければ飯も食べれず・・・。 まとまって入ってくるお金はギャンブル代と借金の返済に消える。 ギャンブル代が無くなったため先月作った「JCBカード」のキャッシングで 「50,000円」を借りた。 「これは翌々月の一括返済なのに、大丈夫なの?」 「なんとかなるでしょう。1回でもパチスロで勝てば10万円くらいすぐにできるって」 とても楽観的。 だが、結果は最悪な事態を招くのだが、この頃はまだ「一発逆転」でなんとかなると思 っていた。 まさか自分が借金で苦しむなんて夢にも思っていなかった。 おそらく犯罪を犯す人も、まさか自分が犯罪を犯して牢屋に入るとは夢にも思わないで しょう。 <1998年3月現在>  ・借入先:5件(武富士、DCカード、アイフル、アコム、JCB)  ・借入金:100万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:156,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第17回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年4月> 家の中のものがどんどん無くなっていく・・・。 CD、ゲーム、マンガ本、ビデオ、CDウォークマン・・・。 パチスロをやるお金を作るために、CDやマンガ本などを売った。 CDは、最近発売されたものは1,500円くらいで買ってくれるが、古いCDは 200円や100円でしか買いとってくれない。 マンガ本なんかはもっとシビアで、1冊10円や20円の世界だ。 以前に、新聞を読んでたら「あなたの持つエロビデオを高価買取!!」という広告 があった。 もちろん家にあったエロビデオを全て持っていく。 全部で40本近くあった。 予想では、1本200円×40本=8,000円くらいはいけるのかな?と思い、 電車でその店まで持っていった。 40本のエロビデオはかなり重かった。 しかも、「途中で警察に職務質問なんかされたらどうしよう?」と心配しながら 行ったので、かなり疲れた。 店の人に持っていったビデオを見てもらうこと数分。 店員からの驚くべき一言。  店員:「350円ですね」  私 :「はい?」 私は一瞬意味がわからなかったので、聞きなおす。  私 :「1本350円ですか?」  店員:「全部で350円ですよ」  私 :「本当ですか?」  店員:「中古のビデオは売れないんだよね」 ここまでの電車賃にもなりやしない・・・。 もう一度、この40本のエロビデオ(約20キロ)を持って帰る気力も無いし。  私 :「350円でいいです・・・」 大学3年にもなって、おれはいったい何をしているんだろう・・・。 人生を無駄に過ごしているな・・・。 そういえば、私服もここ最近買ってないし・・・。 なにかが普通の大学生と違う。 時間の過ごし方が明らかに違う。 間違っているな。 この頃、自分の異常性に少し気づき始めるが、時間があればパチンコ屋へと向かう。 お金が無いのに行く。 1,000円しかないのにパチンコ屋に行く。 ああああああああああああああああああ。 25日の借金の返済日が近づく。 でも、お金が無い・・・。 あああああああああああああああああああああ。 どうしよう・・・。 本当にどうしよう・・・。 誰にも相談できない。 <1998年4月現在>  ・借入先:5件(武富士、DCカード、アイフル、アコム、JCB)  ・借入金:100万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:156,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第18回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年5月> 「借り換え」は大変有効な手段だと思う。 金利の高い消費者金融から、金利の安い銀行系へ借り換えることによって、生活 の安定が図られるなら、是非やるべきだ。 でも、私は「借り換え」によって借金が増えていった・・・。 お金が無い。 いつものことだ。 もはや借金をすることに負い目を感じない。 「DCカード」と「JCB」、併せて毎月10万円の支払いが最大の問題だった。 「DCカードとJCBを全部返済したい」  ↓ ↓ ↓ 「毎月の支払いが少ない金融会社から借金をしよう」 そんな賢い(?)選択から私が選んだのは「オリックス倶楽部」。 ここは、50万円までの借り入れだと支払いが1万円ですむ。 「うまく借りられれば、毎月の返済が15万円から6万円くらいになるな」 インターネットで申し込むとすぐに電話がかかってきた。 オリ:「ありがとうございます。今回のご利用目的はなんですか?」 私 :「借金の一本化です」 オリ:「今、借金はおいくらありますか?」 私 :「100万円くらいです」 オリ:「それでは、借り入れ先と金額を教えてください」 私 :「武富士が30万円、アコムが20万円、アイフルが30万円、あと、DC     カードとJCBからも借りてます」 オリ:「そうですか。ちょっとお待ちください」 (待つこと数分) オリ:「え〜とですね、今のままだとちょっと難しいですね」 私 :「どうすればいいですか?」 オリ:「どこか金額の少ないところを返済して、借入の件数を減らしませんか?」 私 :「それができたらとっくの昔にやっています」 オリ:「う〜ん・・・・」 私 :「オリックスさんから借りたお金は全部返済に回して、一本化したいんです     よ!本当にお願いします!!」 オリ:「ちょっとお待ちください」 (またまた数分待つ」 オリ:「では、30万円お貸ししますので、武富士さんを完済してもらえますか?」 私 :「わかりました。すぐ完済してきます」 オリ:「では、完済しましたら、『完済証明書』を弊社まで送ってください」 私 :「すぐ送ります」 そして、「オリックス」から30万円が振り込まれた。 そのお金で「武富士」を完済する。 でも、結局30万円全部を返済に使ったので、ほとんど手元には残らなかった。 しかし、私の知らないところで大きな変化が起きていたのだ。 それはJDBなどの信用情報機関に新しく記された情報。  『松下一樹 「武富士」完済』というデータ。 これが私の評価をガラリと変えてしまったのだった・・・。 <1998年5月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:100万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:151,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第19回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年6月> 先月、「武富士」を完済して解約した私。 ※「オリックス」から30万円借りて返済したので、借金総額は全く変わってい  ないんですが・・・。 ここで、現在の借金の状態をお知らせします。 借り入れ先     借入額    限度額 アイフル     250,000円   300,000円 アコム      200,000円   200,000円 オリックス    300,000円   300,000円  JCB       50,000円    50,000円 (キャッシング) DCカード     50,000円    50,000円 (キャッシング) JCB      150,000円 (ローン)  <合計>   1,000,000円  ※「JCB」と「DCカード」のキャッシングは、毎月5万円まで借りられて、   翌々月一括返済。 「アイフル」以外は限度額いっぱい借りている。 本当に情けない・・・。 でも、病気は簡単には治らない。 朝起きる。 時計を見る、「8:42」 床に転がっているジーンズをはき、干してあるTシャツを着る。 ぼさぼさ頭に帽子をかぶり、自転車に乗る。 行き先は「アイフル」へ。 あといくら借りられるかは常に把握している。 ATMにカードを入れる。 すると、今まで見たことの無い文字がでてきた。 《増額申込み》 なんだ? でも、今はそれどころではない。 パチンコ屋の開店時間(9時)まであと数分しかない。 とりあえず、限度額いっぱいの「5万円」を借りる。 <3時間後> 「おけら」になる:(意味)まったくお金がなくなること。 パチンコ屋を出る。 ちょうど昼時なのか、サラリーマンやOLがたくさん歩いている。 おれのポケットには小銭と限度額いっぱい借りたサラ金のカードしかなかった。 「帰ろう・・・」 自転車に乗って少し行くと、さっきの「アイフル」で見た文字を思い出した。 《増額申込み》って、なんとなくいい感じがするんだけど・・・。 急いで「アイフル」へと向かう。 ATMにカードを入れると、やはり《増額申込み》の文字が出てきた。 とりあえず押してみる。 《いつもありがとうございます。お客様は増額の申込が可能です。  現在の限度額30万円から50万円に増額することができますが、いかがいたし  ましょうか?》 私にとって全くの愚問である。 当然申し込む。 「ありがとうございます。限度額が50万円となりました。毎月の返済金額も変更  になりますので、ご確認ください」 まじで?本当に50万円まで借りられるの? 不思議に思いながら、興奮している自分。 《借入》のボタンを押すと、確かに借入可能金額「20万円」という文字。 じゃあ、「10万円」借りられるの? 《借入金額:10万円》とボタンを押す・・・。 「10万円」登場!! 借りれた!!!! やった!!!! 意味がわからないけど、現金が10万円!!!! すごく嬉しかった。 なぜかガッツポーズが出る。 その足でさっき「5万円」負けたパチンコ屋へとリベンジ!! 閉店までいて、さらに「6万円」の負け。 でも、まだ現金で「4万円」あるし、「アイフル」でも借りられる。 「よし、明日も朝からやってやる!!」 でも、なんで「アイフル」で増額できたのか、この頃は全くわからなかった・・・。 <1998年6月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:111万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:159,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第20回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年7月> 現在、大学3年生の私。 入学してからずっと続けているパチンコ屋のバイトも既に3年目を迎えていた。 バイト先では正社員を使わない方針のため、あれよあれよとバイトの中で一番の 古株になっていた。 大学生になったらどうしてもやろうと思っていたこと・・・。 それは「塾の講師」。 でも、生活の為にパチンコ屋のバイトを辞めることはできない。 そこで、1週間に2・3日の出勤でいい塾を探してバイトを始めた。 塾の先生の仕事は本当におもしろかった。 子供たちとは勉強以外の話もしたし、本を貸してあげたりもした。 塾には、他の大学から来るバイトもいたし、バイト終わりで飲みに行くことも あった。 ただ、大きな問題があった。 バイト代が安いということ。 時給は「1,800円」と高いのだが、1日で働ける時間が長くて3時間。 ローテーションの問題で、短い時は1時間しかないときもあった。 塾のバイトに行くと、当然パチンコ屋のバイトは減る。 結果的に、バイトの収入が7万円くらいになってしまった。 (今までは、10万円前後はあったのに) 前月までは、パチンコ屋のバイト代で毎月の借金の返済が全部できていたのだが、 今はどうしても「JCB」か「DCカード」のキャッシング分(各5万円)が足り ない・・・。 延滞だけはしないように、なんとかしないと・・・。 でも、「JCB」の返済が滞り始める・・・。 最初はすごくドキドキした。 実家の親に電話がいくんじゃないかと。 「あなたのご子息が借りたお金を返さないんですが」 「代わりにお金を返してもらえませんか?」 でも、実際、親に電話がいくということはなかった。 10日くらいすると「JCB」から手紙がくる。 『返済日が過ぎています。ここに振り込んでください』という内容。 「なんだ。返済がちょっと遅れても大丈夫じゃん!!」 この考えが後にとんでもないことを引き起こした・・・。 ※ちなみに、先月限度枠が50万円になった「アイフル」からしっかり10万円を  借りています(原因はいつものとおりパチスロです)  借入額は限度いっぱいの50万円になりました。 <1998年6月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:120万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:159,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第21回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年8月> 今月も金が無い。 金が無いことに慣れてしまっている。 でも、パチスロをやるお金はなぜかできる・・・、不思議だ。 CDや本を売ってでも金をつくる。 1万円あればパチンコ屋に行く。 そして負ける。 まさしく「病気」、「ギャンブル中毒」。 部屋の中は、広島から仙台に出てきた時とあまり変わっていない。 テレビ、ビデオ、ベッド、パソコン(これだけ増えた)・・・。 この3年間なにをしてきたのか・・・。 この頃、わざと遠くのパチンコ屋に行くようになっていた。 (理由は無い) まず、テレビゲームをして徹夜をする。 そして、朝7時頃に家を出て2時間かけてパチンコ屋に向かう。 自転車で行くこともあれば、電車で行くこともあった。 ポケットには、小さい地図と1万円の入った財布だけ。 できる限りお客さんのいないパチンコ屋に入る。 (理由は無い) 人と接するのが面倒くさい・・・。 8月のある日、ふと思う。 「アコムって、限度額いっぱい借りていたかな?」 本当は知っているのに、知らないふりをする。 「アコムの機械が壊れて、借金が0にならないかな?」 そんなことがあるわけがない。 「?」 アコムのATMにカードを入れてみると、前に見たことのある文字が出てきた。 《増額申込み》 「おっ!!」 胸が踊った。 急に緊張してくる。 無我夢中で《増額申込み》のボタンを押す。 《いつもありがとうございます。お客様は増額の申込が可能です。  現在の限度額20万円から50万円に増額することができますが、いかがいたし  ましょうか?》 愚問!!!! もちろん「はい」である。 1分後、「10万円」を引き出した。 なんて簡単なんだろう。 現金で10万円を持つと、なんでもできるように感じ、パチンコ屋に行くことが、 とても馬鹿らしく思えてしまう。 といって、パチスロ以外に時間をつぶす術(すべ)を知らない。 自動販売機で缶コーヒーを買って、パチンコ屋に消える。 この頃、パチスロを打っていても退屈に感じてしまう。 朝9時から夜の11時まで、14時間打ちっぱなし。 これを毎日続けているのだから当然だ。 20〜22歳のほぼ半分をパチスロに費やし、借金を増やしていった・・・。 「大学生活って、もっと楽しくて素敵なものだと思ってた」 8月、大学では就職活動が始まっている。 「おれも就職できるのかな?」 なんかどうでもよかった・・・。 <1998年8月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:129万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:162,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第22回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年9月> 大学では就職活動が始まっていた。 大学のOBに電話したり、パソコンで会社の情報を調べたり、就職課に行って 相談したり・・・。 「まだいいや・・・」 おれはすごく他人事のように感じていた。 とても就職活動に神経をそそぐ気にはならない。 それはそうだ。 毎月16万もの返済があれば、どんな人間でも不安になるというものだ。 手にするバイト代・仕送りは全て借金の返済へと消えていった。 それでも元金は全く減らない。 「返しては借りる」。 この繰り返しなのだ。 そして、それは突然やってきた。 いつものように「JCB」の返済が1週間遅れて、銀行引き落としではなく、 銀行振込で5万円を返済した。 そして、また「JCB」で5万円を借りようとした時、この文字が出てきた。 「このカードはお使いになれません」 なんだ? 今までも返済が遅れたときは、再度の借入がすこしの期間できないことがあった。 しかし、今回は違う。 2週間たっても、まったくカードが使えないのだ。 「なんで?」 少し不安になり、カードの裏に書かれてある電話番号に問い合わせてみた。  私 :「すいません。カードがつかえなくなったんだけど」 JCB:「番号と名前を教えてください」  私 :「○○△△。松下一樹です」 JCB:「少々お待ちください。え〜とですね、お客さん、今まで返済が送れてい      ますよね?」  私 :「いや、きちんと返済しましたよ」 JCB:「でも、返済が何度か遅れてましたよね?」  私 :「あっ、はい・・・。そうなると、もうカードは使えないんですか?」 JCB:「お客さんの場合、返済の遅れが何度もありますので、そうなりますね」  私 :「・・・・・(絶句)」 JCB:「よろしければ、今お持ちのJCBのカードを返却していただきたいんで      すが」   私 :「・・・、分かりました」 その後、JCBの係の人がカードの送り先の住所を電話の向こうで言っていた。 だが、全く聞いていない。 いや、聞こえていなかった。 「まじで?」 それは、まさしく自分の価値が一つ下がったことを意味していた。 世間に「ダメ」の烙印を押された気分。 そして、すごく不安になった。 もしかして、間違ったんじゃないか? 今まで通り、JCBのカードをATMに入れると「5万円」を借りられるんじゃな いか? しかし、その淡い期待も簡単に崩れ去った。 街角にあるキャッシュカード専用のATMにJCBのカードを入れた瞬間、シューと いう音とともにATMに吸い込まれていった。 そして、そのカードは2度と戻ってこなかった・・・。 ATMに出た文字。 「このカードはご使用になれませんので、こちらで破棄いたします」 ああああああああああああああ。 JCBから5万円を借りられないことで、「返済パターン」が崩れた。 仕方が無い、「アコム」で借りて返済しよう。 「借金の返済のために借金をする」 きれいな「借金スパイラル」に陥っている・・・。 就職活動のスーツも買わないといけないのに。 お金が無い・・・・。 <1998年9月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:133万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:164,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第23回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年10月> 1998年。 「就職氷河期」。いや、「就職”超”氷河期」 希望する企業に入社することは至難の技といわれていた。 数百社に資料請求をして、返事が返ってきたところにまた連絡をする。 何百枚の履歴書を書いて、面接の練習をして・・・。 大学の同級生たちはそんな普通の活動をしていた。 その頃、わたしは当然のようにパチスロをしていた。 ヒゲもそらず、帽子をかぶり、行く途中で缶コーヒーを買って・・・。 「おいおい。それでいいのか?」 とは、全く思わなかった。 「なんとかなる」 人生を簡単に考えていた。 「とりあえず、スーツを買わないと」 なんとなく思った。 でも、金が無い。 親に電話しよう。 スーツ代ならもらえるかな? 私の親は決してケチではない。 子供を広島から仙台の大学に入学させて、仕送りもしっかり送っている。 親のボーナスの時には、いつもより多めに仕送りが振り込まれる。 そんな、父親の口癖は、 「借金だけは絶対するな」 いったいどこから自分の歯車が狂ったのか。 そんなこと今考えてもしょうがない・・・。 父親に電話をすると、スーツ代と靴代、かばん代として10万円がすぐに次の日、 私の通帳に振り込まれた。 振り込まれた日、その10万円をパチスロで使ってしまう自分がいた。 親不孝。 親不孝。 親不孝。 実家は決して金持ちではない。 母親は缶詰工場のパートで働いている。 「どうしよう。スーツを買う金がない・・・」 3日後、もう一着スーツを買うと言って父親にお金を無心した。 「いいか。2着目のスーツは1着目と色違いを買えよ。交互に着れば、長持ちす  るからな。」 父親の言葉が心に痛かった。 しかし、その2着目のスーツ代・4万円もパチスロに消えていった・・・。 なんで? なんでそうなるの? なんで普通の生活ができないの? この頃、死ぬのが怖かった。 もし交通事故で死んだら、ちょうど葬式が終った頃に消費者金融から電話がくる んだろうな。 「アイフルですけど、お宅の息子さん50万円の借入れがあるんですが・・・」 「アコムですけど、お宅の息子さん35万円の借入れがあるんですが・・・」 「オリックスですけど、お宅の息子さん30万円の借入れがあるんですが・・・」 「DCカードですけど・・・」 絶対死ねない。 <1998年9月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:127万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:164,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第24回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年11月> バイト先のパチンコ屋に一人の新人が入った。 外見は少し暗そうな男で、特にこれと言って特徴は無かった。  ※名前を「タケ」(仮名)としておく 口数も少なく、バイトが終っても一緒にどこかに飯を食べに行くということもない。 それが、バイト中に突然話し掛けてきた。 タケ:「よかったら、今度飲みにいきません?」  私:「(気軽に)いいよ。いつにする?」 タケ:「今度いつお休みですか?」  私:「木曜が休みだけど。別に休みじゃなくても、バイト終ってから飲みにいけ    ばいいんじゃない?」 タケ:「いえ。休みのほうがいいんです。ちょっと相談したいことがあって・・・」  私:「いいよ。じゃあ、木曜ね」 そして、木曜日、待ち合わせの場所に行くと、車が1台止まっていた。 その車の窓が開いて、タケが手を振っている。 タケ:「すいません。どうぞ乗ってください」  私:「おう、分かった。・・・、あっ!!」 車の中に入るとタケの他にもう一人乗っていた。 タケ:「こちらは先輩です」  男:「どうもはじめまして。タケがバイト先でいつもお世話になってます」 その男は丸坊主で、どこか怪しい感じがした。 ※名前を「テツ」(仮名)とする そして三人を乗せた車は動き出した。 どこに向かっているのか全くわからない。 飲み屋街からもどんどん遠ざかっていく。  私:「(少し不安になって)どこにいくんですか?」 テツ:「大丈夫です、まかしてください」  私:「(まかせられるか? なんかやばいんじゃない)」 そして、車はあるビルの前で止まった。 周りには民家があるだけで、飲み屋らしきものは見えない。  私:「ここですか?」 テツ:「(ニヤリと笑いながら)飲みに行くと思った?」  私:「飲みに行こうって誘われましたから」 テツ:「まあ、正直違うんだよね。いきなりだけど、『宗教』に興味ある?」  私:「はぁ?」 テツ:「ぼくたちね、○○っていうのを広める活動をしてるんだけど、これはね・・」 この瞬間、「やられた」と思った。 最初から飲みに行く気は全く無く、この○○という宗教におれを勧誘する気だったのだ。 テツ:「ねえ、聞いてる?」  私:「帰ります」 テツ:「まあまあ、話だけでも聞いてよ」  私:「(ちょっとキレて)ああ!!おまえ何言ってるの??なあ、おい。帰るからな」 テツ:「(冷静に)いいけど、また今度家に行くよ。住所も知ってるし、バイト先も知っ     てるし」  私:「なあ、それって脅してるの?おい、タケ君。なんか言ってよ。バイト先の先輩を     こういう所に誘っていいと思ってるの?なあ、おい!!」 テツ:「(ここで初めてキレる)おい!!!おまえ、今なんって言った!!なんも知らな     いで、○○をこういう所って言ったろ!!おい、おい、おい!!」 この後、この車の中で3時間ほど押し問答が繰り広げられた。 「○○という宗教のすばらしいこと」「○○に入ると将来が予知できること」など。 さすがに3時間もすると、少し頭がくらくるしてくる。 (この車が止まっているビルの一室でセミナーが開かれていて、そこにおれをどうしても  連れていきたいらしい) 警察の事情聴取もこんな感じなのかな? 何十時間も警察に取り調べを受けていると、本当は犯罪を犯してなくても、 「やりました」 って言っちゃう気持ちがよく分かる。 最終的に、開放されたのが7時間後。 テツが最後に言った言葉は「おまえ、根性あるな。がんばれよ」だった。 生まれて初めての「軟禁」。 車の中だから、逃げよう思えば逃げられるので「軟禁」 これがアパートの一室で、鍵を閉められて逃げることができない状況だったら「監禁」 でも、今思うと「いい経験(おいしい経験)」をしたな、って感じです。 <1998年11月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス)  ・借入金:131万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:167,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第25回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1998年12月> 「タイミング」は重要だ。 今まで全く気にならない、いやむしろ邪魔だったものが、急に「救世主」のよう に思えてしまう。 今年の5月に「武富士」を完済して「オリックス」に借り替えた。 それから、「武富士」から何度も電話があった。 武富士:「お金に困ってませんか?実績がありますから、来店してもらえばすぐ      にご融資できますよ」     「とりあえずカードだけ作りませんか?お金は別に借りなくてもいいで      すから。本当に困った時に利用してもらえばいいですよ」 などと、最初の頃は月に5度は電話がかかってきて、そのたびに、 「いいです。借金しなくても生活できますから」 と言って断ってきた。 (夜にでも電話がかかってくるので、かなり迷惑) そして、しばらく電話はこなかった・・・。 しかし、12月。 今月はかなり厳しい。 色々とお金の工面をしても、明らかに5万円はショートする。 そのとき、電話が鳴った。 武富士:「もしもし。お世話になってます、武富士ですが、お金のほうは困って      ませんか?」  私 :「困ってなくはないけど・・・」 その瞬間、明らかに武富士社員の声のトーンが変わった。 武富士:「それなら、1回来社してもらえませんか?いくらご融資できるかすぐ      にお知らせしますよ。1度契約してもらってるので、審査にお時間は      かかりませんが。いかがでしょうか?」  私 :「(見栄をはって)でもすぐにお金が必要なわけじゃないんですよ」 武富士:「そうですか。でも、今カードだけ作っておけばいつでもご利用できま      すが。今日はお時間はありませんか?」  私 :「そうですね・・・。カードを作るのにどれくらい時間はかかります?」 武富士:「30分もあれば終りますよ」 武富士に行くと本当に30分もかからず契約ができた。 限度額は「50万円」。 武富士ではお金は借りずに、駅にあるキャッシュポイント(信販系のATM)で 「20万円」をおろした。(20万円という金額に理由は特にない) 以前なら現金で20万円を持つと、「天下を獲った」ような気持ちになったのだ が、今は全く何も感じない。 むしろ、罪悪感を感じでしまう。 このとき、ふと思った。 「今、借金の総額いくらあるんだろう?」 今借りた武富士で20万円。 アイフルで50万円。 アコムで50万円・・・。 「えっ!!借金が100万円を越してる!!」 「まじで!!」 すごく怖くなって、自分が信じられなくなった。 冷や汗がでる。 「やばいんじゃない?」 「100万円もどうやって返すの?」 先の見通しが全くたたない・・・。 財布の中にある「20万円」がとても恐ろしく思えてきた。 1998年12月、 もう後戻りできない所に自分がいることに気がついた。 <1998年12月現在>  ・借入先:6件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス、武富士)  ・借入金:150万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:138,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第26回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年1月> 年末年始、バイト先のパチンコ屋は繁盛していた。 正月にも関わらず常連のおじさんたちがパチンコ台の前で一喜一憂している。 「おれもあんな大人になるのかな・・・」 正月の雰囲気も無くなりつつあった、1月10日。 パチンコ屋のバイトを終ってアパートに帰ってくると、自分の部屋のドアに1枚の 張り紙があった。 『督促状』 この言葉で文面は始まっていた。 「家賃が支払われていないので、すぐに払え。さもなければ今すぐにでていけ!!」 という内容の、賃貸会社からの督促状だった。 「まじで〜!!」 確かに、家賃はまともに払っていないのは事実。 一応、家賃は「銀行引き落とし」だが、毎月1ヶ月近く遅れてから「銀行振込」で 支払っていた。 でも、こちらにも言い分はある。 「家賃は支払いが遅れているとはいえ、きっちり払ってるじゃないか!!今すぐ出て  行けなんて、おれを殺すつもりか!!」 すぐに賃貸会社に電話をかけてみた。 おれ:「もしもし。○○の203号室に住んでいる松下と申しますけど、今日帰って     きたら『督促状』が貼ってあったんですが」 賃貸:「少々お待ちください・・・。松下さん、今月のお家賃が引き落としされてい     ないんですが、どうなさいました?」 おれ:「(なぜか開き直って)いや、どうもしないですよ。毎月のことじゃないです     か、家賃の支払いが遅れるのは」 賃貸:「そう言われても、支払いはきちんとしてもらわないと困ります。では、今月     のお家賃はいつお支払いいただけますか?」 おれ:「う〜ん、バイト代が入る20日まで待ってもらえませんか?」 賃貸:「少しだけでも振り込んでいただくことは可能ですか?2万円とか?」 おれ:「本当に今、お金が無いんですよ。3,000円とかだったら大丈夫ですけど」 賃貸:「では、3,000円を振り込んでください。残りは20日までお待ちします」 おれ:「ありがとうございます。本当にすいませんでした」 でも、3,000円を払ったら無一文になっちゃう・・・。 CDでも売って、バイト代が入る20日まで生き抜こう!! 家には「米」はあるから、なんとかなる!! しかし、次の日・・・。 大学から帰ってみると、ポストに電力会社からの封筒が入っていた。 封筒の中に、うっすら「赤いモノ」が見える。 『10月分の電気代が支払われていません。1月15日で電力の送電を停止いたします』 「まじで!!」 これが俗に言う「電力会社のレッドカード」 そういえば、前に「10月分の電気代を払ってください」という内容の黄色い封筒も届い てた。 こっちは「イエローカード」か・・・。 「なんなんだよ、サッカーをパクりやがって、くだらね〜!!」 でも、電気が無いと困る。 「米」があっても、炊くことができない。 ああああああああああああああああああ!!! うううううううううううううううううう・・・。 やばい・・、どうしよう・・・。 困った時によくやるのが、「通帳記入」。 だれかが間違えてお金を振り込まないかな?と思い時々やる。 助かった。 父親から臨時で「3万円」が振り込まれていた。 (夜に電話をすると、お年玉ということだった。感謝。) すぐに電気代を支払って、かなりほっとする。 そして、全く懲りずにパチンコ屋に勝負に行くのであった・・・。 <1999年1月現在>  ・借入先:6件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス、武富士)  ・借入金:149万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:138,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第27回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年2月> これで何度目だろう。 「家計簿」を書こうとしたのは・・・。 必ず新しいノートを買って書き始める。 表紙には、「家計簿」と大きく書いて、まずは現在の所持金を書いて・・・。 でも、1週間後にはゴミ箱に入っている。 理由は簡単で、家計簿というのは「1円」を大事にするためにつけるものであっ て、毎日無計画にパチスロをやっている私にとっては、無駄なこと。 同じように、「ギャンブル収支表」も何度もつけようとした。 結果は、あまりにも無残な結果が怖くなったので止めた。 2月3日 損:30,000円 パチスロ      A店 2月3日 損:10,000円 パチンコ・パチスロ A店 2月4日 利: 5,000円 パチスロ      B店 2月6日 損:22,000円 パチンコ・パチスロ A店・B店 2月7日にはついに、1日でパチスロでいくら使ったか分からなくなった。 というのも、1日でアコムとパチンコ屋を何度も往復したため、いくら投資した か分からなくなったのだ。(何万円も使ったため、精神が錯乱していた) ポケットに入っているくしゃくしゃのアコムの明細書を見ると、3回引き出して いた。(それもよく覚えていない) 合計は、10万円。 これで、アコムも利用限度額いっぱいに達した。 そのとき、気持ちの中にどこかほっとしている自分もいた。 「これで、もう借金はできない。借金が増える心配が無くなった・・・」 でも、どこか余裕を持っている自分もいた。 「まあ、またどこかの消費者金融で借りればいいでしょ」 本当は、既に自分の「信用情報機関」における信用は「0」に等しかったのに。 なんでだろう。 なんで、パチスロは「勝つまで止めれないんだろう?」 これでも、破滅するまでには色々とためしてみた。 例えば、 ・1万円しか持たずにパチンコ屋に行く。それもできるだけ遠くのパチンコ屋。  しかも、銀行のカード、消費者金融のカードなど、お金を下ろせるものは全部  家に置いていく。  そうすれば、1万円が無くなったら家に帰らないといけないし、帰ったら再度  パチンコ屋に行くことは無い!!という考えだったのだが・・・。  結果は、負けると「負けたままだと寝れない!!」「家にいてもイライラする」  という状態になって、また近くのパチンコ屋に行きました。 ・ゲームセンターのパチスロで気を紛らす。  禁煙をする時のパイポみたいなものです。  結果は・・・、これでパチスロを止めれれば借金はしません。 ・新規で銀行の通帳を作る。そのとき、あえてカードを作らない。  そうすれば、お金を下ろすときには銀行の窓口でしかお金を下ろせないので、  午後3時を超えたら一切お金を下ろせなくなる。  これは、かなり効果があると思いました。  結果は、朝からパチスロを打つので、午後3時という足枷(あしかせ)はほとん  ど効果がありませんでした。 完全な病気ですね。 末期の「ギャンブル中毒」です。 パチスロをやっている時は精神が錯乱しているのでお金をお金と思っていないし、 塾のバイトに行くための電車賃(200円)が無くなったこともありました。 最悪です。 しかも、来月は大学のテスト、そして、就職試験も続々とやってきます。 こんな借金まみれの俺でも就職できるのかな? 「身辺調査」とかあったら、かなりやばいな。 だって、就職希望先って「銀行系・金融系」だし・・・。 <1999年2月現在>  ・借入先:6件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス、武富士)  ・借入金:158万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:140,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第28回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年3月> 大学3年が終ろうとしている。 来年は大学4年生、卒業か・・・。 「えっ!!卒業できない?」 大学3年のテストが終った時点ですごいことが判明した。 なんと卒業できる単位(※)に届かないのだ。 普通は大学3年で大体単位は取り終わるのだが、私は毎日パチスロをやり過ぎた ために出席が全然足りない。 それに伴い単位が取れていなかった。 「まあ、大丈夫。卒業できるでしょ」 これもまた気楽に考えていた。 借金と同じ。 気がついたときには、もう遅い・・・。 借金まみれで卒業もできないだと、親になんて言えばいいのか・・・。 それよりも、おれの人生は・・・。 高校卒業までは順調だったのに、今の転落ぶりは「夢」のようだ。 いや、そんなことよりも大学を卒業しないと今やっている就職活動が全くの無駄 になってしまう。 大学の相談窓口に行って相談した。  私 :「このままだと卒業できないんですけど」 相談員:「理由はなんですか?」  私 :「バイトと・・・。あとは、遊びですね」      (パチスロのやり過ぎとはさすがに言えない) 相談員:「う〜ん。でも、それは自業自得ですね」  私 :「・・・。確かに」 その後、なんとか英語の教授にお願いして、テストを受けていないがなぜか出席 が良かったのと、これまた、なぜかレポートを全て出していたという幸運(?)が 重なり、「可」をいただくことに成功。 これで4年生の授業を全て出て、全ての単位をとれば祝・卒業!! 絶対無理だ・・・。 全ての単位をとるなんて・・・。 しかも、就職試験のために何度か東京に行かなければならなくなった。 交通費・宿泊代などお金がかかる。 しかも、東京でパチスロもやってみたい! あといくら借りれたっけ? 武富士で「30万円」まで借りられるか・・・。 ※「アイフル」「アコム」「オリックス」は限度額いっぱい借りている。  3社合計で130万円。 よし、がんばろう!! 今年は就職と卒業を手に入れる!! こんな借金まみれでも、「消費者金融」には就職できるのかな?  ※単位とは大学を卒業するために必要なもので、各大学でその数値は違う。   単位は「優・良・可・不可」とあり、「不可」では単位がとれない。 <1999年3月現在>  ・借入先:6件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス、武富士)  ・借入金:167万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:144,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第29回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年4月> 金返してくれよ〜! 就職試験の度に東京に行って、時には東京で泊まる。 それで結果が「不合格」なら、交通費とかの金を返してくれよ!! しかも、東京本社の企業を5つ受けたために、何度東京に行ったことか・・・。 『仙台→東京(新幹線)』で、往復2万円。 本当にお金がないと、就職もできません。 まさしく「就職試験貧乏」。 1つの企業で最終試験までいくと、その会社には5回程度行かないといけない。 もし、東京の5企業全て最終試験まで行ったら、 「5企業×5回×2万円=50万円」 実際は最初の面接で2つ落ちたり、面接が同じ日になったりして、うまいことい きました。 それでも、東京には10回くらい行ったな〜。(10回×2万円=20万円) 東京駅と受験先の企業とパチンコ屋だけ行った記憶があります。 バイトがなければ、もっとパチスロ三昧できたのですが、そんな時間はありません。 この4月は本当に忙しい。 バイト、学校、就職試験、バイト、就職試験・・・。 午後から就職面接があるので、午前の授業もリクルートスーツで受けたり。 (しかも1年生の授業なので、周りは誰も知らない) そういえば、金融関係(銀行、証券会社)は全部ダメでした。 その原因は「私の能力」なのか、それとも「150万円を超えている借金」なの か・・・。(こればっかりは、人事の担当に聞かないと永遠に分からないです) 4月後半になり、残っている企業は二つ。 1つは、最大手の飲料企業。 もう1つは、なぜ受けたかよく分からない小さい出版関係の企業。 あとは5月に最終の社長面接があるのみ。 ここまでくると、「どうにでもなれ!」ってな感じです。 でも、お金が無い・・・。 頼みの綱の「武富士」も遂に限度額いっぱい借りてしまった。 明細書を見ると、この1ヶ月で20万円近く借りている。 う〜ん、どうしよう。 まあ、就職できなかったら「就職浪人」でもして、1年間アルバイトしようかな。 それで、借金を返して、きれいな体(借金が無いという意味)で就職だ!! 今思うと、これがベストな選択だったのかもしれない。 就職することにより、借金の増えるスピードは加速していった。 理由は簡単で、毎月のもらえるお金が減ったからだ。 現在は、仕送り:10万円     バイト:10万円(パチンコ屋+塾講師)     奨学金: 5万円 合計:25万円。 これが就職することにより、月給18万円になってしまう。 実質7万円の減額。 普通に考えれば無理。 っていうか、毎月の借金の支払いが15万円あって、どうやって生活するの? ははははっははは。 あれっ? 全然無理じゃん。 普通に考えれば、生活が破綻することが分かるじゃないですか。 でも、その時は何も考えなかった。 経済学部なのに、こんな簡単なお金の計算もできないなんて。 そして5月、人生最大の選択ミスをしてしまう・・・。 <1999年4月現在>  ・借入先:6件(DCカード、アイフル、アコム、JCB、オリックス、武富士)  ・借入金:186万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:149,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第30回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年5月> ゴールデンウィークが終った頃に、就職試験の連絡がきた。 結果は2社に合格!! 1つは、最大手の飲料企業。 もう1つは、小さい出版関係の企業。 ここで、「人生最大の選択ミス」を犯す。 給料もいい最大手の飲料企業を断ったのだ。 そして、小さい出版関係の企業に入社することにしたのだ。 今思うと、なぜそんなことをしたのだろう? 具体的な理由が自分でもわからない。 おそらく「就職が決まっても、大学を卒業できない」と思いこんでいたんじゃな いだろうか。 ちょっと落ち着いて考えてみる。 まず、(最初の何年かは)月給の面ではさほど差はない。 だが、ボーナス・住宅手当・残業手当などで、年間100万円は違うだろう。 ボーナスを1回50万円もらえれば、1社完済することは可能なのに・・・。 (今の会社のボーナスだと、たまったカードの支払いをすると終ってしまう) 「やっぱり大手に就職するべきだった・・・」 大企業に勤める友人は社宅に住んでいるので、家賃が毎月5,000円でいい。 家賃が55,000円の私と、これだけで5万円の差がある。 さらに残業手当もない。 「給料と就労時間を計算したら、時給が600円だった」 と、就職先の先輩が言っていた。 いったいどんな会社だ? 田舎のマクドナルドの時給よりも安い。 でも、就職先も決まり、あとは卒業するだけ。 親に連絡すると、就職祝いとして5万円もらった。 この5万円は全て借金の返済にあてる。 「よし!!この調子で借金を減らすぞ!!」 と思った矢先、パチンコ屋に貼られた『新台入替』の文字を見つける。 「1万円だけ・・・」 3時間後、6万円が泡と消えていた・・・。 果たして卒業するときには、いったい借金はいくらになっているのだろう・・・。 <1999年5月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士)  ・借入金:185万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:139,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第31回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年6月> 夜、バイトから帰ってくると留守電が1件入っていた。 「え〜、一樹ですか、お父さんです。今、どこにいるんだ?おじいちゃんの具合  がちょっとよくないんで、すぐにこっちに来なさい。お医者さんが言うには、  ここ2・3日ということです。とりあえず、これを聞いたら一度電話するよう  に」 父からの留守電だった。 すぐに父に電話をする。 俺:「もしもし」 父:「どこに行ってるんだ、こんな夜遅くまで」 俺:「バイトだから仕方ないだろ」 父:「とにかく、広島に戻って来い。おじいちゃん、もう意識ないんだ」 俺:「まじで?」 父:「まじだから・・・。お前、礼服はあるか?」 俺:「そんなもん無いよ」 父:「ああ、分かった。とにかく明日、朝すぐ来いよ」 でも、広島に帰る電車賃が無い。 俺:「でも、今、金が無い」 父:「明日、朝に5万円振り込むからそれですぐに帰って来い」 俺:「うん、分かった」 そして次の日、広島に帰っていった。 おじいちゃんは、その日の午後に亡くなった。 就職先が決まったことが最後の孝行だったと思う。 通夜・葬式と無事に終わり、落ち着いた頃に父親が聞いてきた。 父:「お前、貯金はしてないのか?」 俺:「貯金はないって。就職試験もあったし、結構お金がかかるんだって」 父:「就職試験でお金がいるんだったら、もっと早く言えばいいだろ」 俺:「いいよ、もう終ったから」   (なんだ、言えばもらえたのか。借金までする必要なかったのに・・・) 父:「まあ、貯金は働いてからすればいいから、あんまり無理はするなよ」 俺:「ああ」 父:「借金だけは絶対するな!」 「もう、遅い」とは言えなかった。 俺:「借金なんかしないよ。おれ、経済学部だよ、マルクスだよ」 父:「そうか。まあ、一樹だから心配はしてないけどな」 確かに、自分も親だったら思うかもしれない。 国立大学の経済学部に通っていて、就職先も決まり、今まで不良らしいことを 一度も見せたことがない息子が、まさか借金があるなんて・・・。 それも、200万円近く・・・。 この時点で、親は借金があることは全く知らない。 よく隠してるものだ、と自分でも思う。 逆に、最後まで隠しきれたことが「アダ」になったのかも・・・。 借金が50万円くらいの段階で、偶然財布の中にあった「武富士」のカードを 親が見つければ、それで親は一生「この子は借金をする」と注意をしてくれる だろう。 広島を出発するときに、父親から3万円をもらった。 電車の中、仙台に着いて駅前のどのパチンコ屋に行くかでソワソワしている自分 がいた。 「父さん、ぼくは借金が200万円あります」 この言葉を言えたら、人生は変わっていたのだろうか・・・。 <1999年6月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士)  ・借入金:185万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:139,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第32回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年7月> 大学も夏休みに入り、アルバイトを増やすことにした。 この夏休みでなんとか借金を減らさないと・・・。 バイト先に選んだのは「深夜のパン工場」。 なんといっても時給が高い。 時給が1,100円。 夜の8時から朝の6時まで、10時間の労働で、「11,000円」のバイト代は かなり魅力的。 「よし、がんばる!!」 しかし、当然仕事は厳しかった。(工場内は暑く、汗が噴出してくる) 1日終ると体重が3キロ減っていた。 帰る途中に吉野家で牛丼を食べ、時計を見ると8時30分。 「もう少しでパチンコ屋が開くな・・・」 パチスロで1,000円を使うのに3分あれば十分。 バイトで1,000円を稼ぐためには、あの蒸し暑い工場で1時間の重労働・・・。 ちょっと考えればすぐに分かるのだが、この頃の自分はお金の感覚が完全に麻痺し ていた。 「最初から負けることを想像して勝負する奴はいない」と、誰かが言ったように、 パチンコ屋に入る前の自分は気持ちが昂揚し、「10万円くらい大勝ちしたら何を 買おう?」などと考える。 「この財布の中の1万円がなくなったら、生活費が全くなくなる。明日から食事は どうするの?」とは考えない。 「楽天家」と「無計画」とは同じ意味。 結局、このパン工場のバイトは5日間でギブアップしました。 あのパン工場の匂いは2度と嗅ぎたくありません。 (しばらくの間、パンは見るのも嫌でした) 当然、借金は全く減らず、いつも借金の返済手段を考えていた。 この時期はまだ必殺の「自転車返済」ができていたので、1社目の返済額3万円が あればなんとか全社返済できた。 自転車返済:A社に3万円を返済して、すぐにまたA社から限度額いっぱい借りる。       そして、そのお金でB社を返済し、またB社から限度額いっぱい借りる。       それを繰り返すことで、毎月やりくりする。 この頃、精神的に「引きこもり」気味にもなっていた。 バイト、パチンコに行く以外は全く家を出ない。 家では「光栄」のゲーム(信長の野望など)ばかりやっていました。 郵便受けに入っていた「裏ビデオ」のチラシに電話したら、届いたビデオの中身が 全部「水槽で泳ぐ熱帯魚」だったり・・・。 なんか上手くいかないな・・・。 お金が欲しい!! お金が・・・。 お金が・・・。 <1999年7月現在>  ・借入先:5件(DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士)  ・借入金:185万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:139,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第33回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年8月> 大学生の必需品、携帯電話。 この出現により、さらに生活は厳しくなった。 私が大学生の時期は「ポケットベル」「PHS」そして「携帯電話」と移り変わ っていく期間で、半年もたてば新規機種に変更しなければならなかった。 「PHS」は結局3ヶ月しか持たず、まだ通話料の高い「携帯電話」へと変化し ていく。 携帯電話で1ヶ月「2万円」使うことは珍しくなく、食費よりも電話代が重要だ った。 携帯電話がなければ友人との連絡もつかない。 でも、今月の支払いは3万円を超えている。 う〜〜〜〜〜〜ん、どうしよう? 手元にお金は無いし、次にお金が入るのは2週間後・・・。 仕方ない、もう1枚カード作るしかないかな・・・。 (でも、審査通るの?これで6社目なんだけど) 大学の学生生協に行くと、たくさんのカードの申込書があった。 「学生期間は年会費無料」 「生協内でカードを利用すると10%引き」 こんな言葉だと全く興味が引かれない自分が悲しい。 (「学生は無利子」だと嬉しいな♪) 「DCは持ってるし、JCBは解約されたし・・・、残るはコレか」 手に取ったのは「UCカード」の申込書。 家に持って帰って記入するが、問題が発生!! 「現在のあなたの借入金額は?」の問いに、何って書けばよいのかわからない。 正直に「5件:180万円」って書く? いやいや、だめでしょう。 そんなこと書いたら、絶対に審査が通らない。 う〜〜〜〜〜〜ん、どうしよう? ダメ元で「1件:30万円」って書く。 その結果は・・・、数日後家に帰るとポストに郵便の不在者連絡表が入っていた。 すぐに郵便局に行って郵便物をもらう。 その時の封筒の厚さが問題。 カードが中に入っている時は、保護のために厚紙が入っている。 そのため厚さが全然違う。 逆に「残念ながら、今回は見送らせていただきます」的な文面の時は、紙が1枚だ けなので薄っぺら。 今回は、手に取った瞬間、「あっ、ぶ厚い!!」 めちゃめちゃ嬉しい!!!! すぐに封筒の中身を見ると、 「キャッシング限度額:5万円、カード限度額:30万円」 の文字。 すぐに郵便局のATMに行き、2万円キャッシングする。 その足でいつも通りパチンコ屋へ。 でも、よくカードが作れたと我ながら不思議。 上手く騙せたのかな? その真相はいまだにわからないが、確実に言えることは、「また借金が増えた」とい うこと。 200万円の大台まであと少し・・・。 <1999年8月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:187万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:159,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第34回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年9月> パチンコ屋で3年もアルバイトをしていると、いろんな人と出会う。 喫茶店のおやじ、変なカップル、風俗嬢、ヤ○ザ、居酒屋の店長、オカマ・・・。 バイト先で問題になるのは「レディースデーで、オカマはどうする?」という点。 見た目が完全に女性で、周りの人のほとんどが女性だと思えば女性として扱うの だが、常連のお客さんがメインの店なので、誰もがあの人は「オカマ」だと分か っている。 そんなある日、悪い予感が当たった。 『本日はレディースデーです。女性の方はどの数字で当たっても無制限!!』  ※「無制限」というのは、どの数字で当たっても交換せずに連続打ちができる   ということ。 パチンコを打っていたオカマがはしゃいでいる。 「やばい!!オカマが当たった」 とりあえず、玉を入れる箱を持っていく。 「しかも、数字が『4』じゃん。男だったら1回交換なんだけど・・・、どうし  よう?」 オカマの隣に座っていたヤ○ザはニヤニヤ笑っている。 わたし:「おめでとうございます」 オカマ:「(野太い声で)今日はレディースデーでしょ。私はどうなるの?」 わたし:「いや〜、どうなんでしょうか?」 オカマ:「ちょっと、どういう意味よ!!」 隣のヤク○がニヤニヤしている。 オカマ:「いいわよ、どっちでも。あなたが思ったようにすればいいじゃない!」 わたし:「(かなり困る)・・・。じゃあ、無制限で」 オカマ:「(満点の笑顔で)ありがと♪」 となりの○クザはニヤニヤしながらタバコを吸っている。 こんな楽しい(?)思い出もありながら、私はこのパチンコ屋を辞める決意をする。 理由は大学のテストが迫り、ひとつでもテストを落とすと留年が決定するから、その 勉強時間確保のため。 それと、塾のバイトの方が楽しかったから。 結局、このパチンコ屋で3年半働いた。 大学生活のほとんどをこのパチンコ屋で過ごし、バイト代の総額は400万円近く になっていた。 でも、1円も貯金することなく、残ったのは200万円近い借金と腰痛だけだった。 その後、半年も経たないうちに、この思い出深いパチンコ屋は倒産した。 すぐに更地(さらち)にされ、駐車場となった。 ふと思う。 「あれっ?パチンコ屋を辞めたってことは、収入が10万円近く減るよね。  借金の返済はどうするの?」 どうするの? 考えてなかった・・・。 来月、返済どうしよう・・・。 16万円の返済どうするの? <1999年9月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:190万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:159,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第35回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <1999年10月〜12月> 日本中が「2000年問題」で混乱してる頃、私は返済方法で混乱していた。 先月で辞めたパチンコ屋のバイト代(約10万円)をもらい、10月はなんとか6件 全部返済することができた。 しかし、11月の返済手段が思いつかない。 必殺の「自転車返済」も、この頃は上手くいかなくなっていた。 例えば、「武富士」で3万円返済しても、すぐに借りられるのは2万円程度、前 なら2万5千円は借りることができたのに。 その理由は、長い期間借りているので利子がつき、元本との合計が限度額を超す ためだった。 12月に入り、「ローソン」の深夜のバイトを始めた。 バイト代がいいのと、短期間でもよかったから。 でも、正直、パチンコ屋のバイトの方が楽だった。 夜更かしは得意だが、夜に仕事をすると話が違う。 かなり体にこたえた。 深夜のコンビニのバイトは、週刊誌とかを読んで時間を潰せばいいというイメー ジがあったが、実際は驚くほどの仕事をやらなければならず、全然楽ではない。 しかも夜に限ってややこしい客が来る。 客:「この荷物を東京まで送りたいんだけど、宛先がよくわからないんだよね。    名前と大体の住所を書けば届くかな?」 私:「たぶん、無理です」 客:「すいません。さっき、肉まんをここで買ったんですけど、食べたら肉まん    じゃなくて、あんまんだったんですよね・・・、取り替えてくれますか?」 私:「分かりました。それで、その間違ったほうのあんまんはどこですか?」 客:「食べちゃいました」 私:「・・・」 客:「あの〜」 私:「はい、なんですか?」 客:「先々週の週刊マガジンありますか?」 私:「無いです」 こんなことをしてると、バイトが終ってからのパチスロがとっても楽しい。 バイトが終って、朝・8時くらいにローソンを出て、コンビニで朝飯を食べながら 開店時間の9時を待つ。 こんなことで借金が減るはずもない。 1999年12月31日を「ローソン」でバイトをしながら過ごした。 そして、2000年を何事もなく迎えた。 「2000年問題でサラ金のデータが壊れて、借金が0にならないかな・・・」 正月はパチンコ屋に行かなかった。 理由は、お金を借りる消費者金融が休みだったから・・・。 情けない・・・。 親からもらった「人生最後のお年玉」もパチスロで消えた。 「人生をやり直せる機械」があったら借金してでも買いたい・・・。 <1999年12月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:190万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:189,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第36回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年1月〜3月> 祝・大学卒業!! なんとか、本当にギリギリで大学を卒業することができた。 卒業日の前日、友人から「お前卒業できるらしいよ」と電話で知った時は、嬉し いのか悲しいのか・・・、複雑な気持ちだった。 というのも、完全に卒業は無理と思い、親になんとかもう1年大学に通わせてく れとお願いするつもりだったのである。 そして、その1年間をバイトに費やし、借金を完済する計画まで立てていた。 それが突然「卒業できる」といわれても・・・。 次の日、無事、卒業式に出席した。 結構楽しく、「卒業できて良かった」と、この時は心から思った。 その後、朝まで友人と飲んで、大学生活の話で盛り上がった。 朝、家に帰る途中にふと思う。 「大学4年間で何をしてきた?」 「浪人してたときに思い描いていた大学生活はもっと違うんじゃなかったの?」 すごく悲しくなった。 だが、人生は卒業により、次のステップへと強引に追いやられる。 ここで、一度「借金」を振り返って考えれば良かったのだ。 この段階で、親に借金があることを伝えれば人生はもっといい方向に進んだのでは ないか!と、今は思う。 (その当時は絶対に言えなかったけど・・・) 現在の借金の総額:190万円 毎月の返済額:19万円   初任給  :18万円(手取り) 小学生でも分かる。 どうやって返済するの? 家賃も食費も給料だけで支払わないといけないのに。 これからは親からの仕送りもなければ、奨学金もない。 むしろ、奨学金はこれから毎月1万円返済していかないといけない。 やばいよな。 やばい・・・、やばい・・・。 でも、まだ【自信】はあった。 今まで、人生で大きな失敗はしたことがない。 必ず、なにかのタイミングで借金はなくなるはずだ。 (根拠は全く無い) 実家の親に「卒業証書」を送った。 私の卒業証書は、「大学4年間を真面目に過ごした」という格好の嘘を親につける キラーパスだった。 このキラーパスを送ると、数日後、親から卒業祝いで5万円が振り込まれた。 これでもう親に借金のことは言えなくなった。 ここで言うと、大学4年間、親に話していたことが全て嘘になるから。 「バイトもやって、サークルも結構楽しいよ」 「先月は友人と東京に遊びに行ったんだ」 「おれの家、大学に近いからみんなの溜まり場になってるんだよね」 本当は毎日パチスロやって、パチンコ屋でバイトして、朝までテレビゲーム。 徹夜の状態で朝からパチンコ屋に行って・・・、大学には全く行かない。 おれが親だったら泣くね。 こんな息子に毎月仕送りしていたと知ったら。 結果はどうであれ、大学を卒業して就職先も決まっている。 とにかく進むしかないのだ。 まさか、2年後あんな状況になるとは・・・。 ここから「人生の転落」のスピードが急加速していく。 <2000年3月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:190万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:189,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第37回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年4月> 1週間がこんなにも長いと感じたことはない。 4月1日から新入社員として働き出して、あっという間に金曜日が終ったとき、 完全に死んだ。 大学4年間で身についた「ふしだらな」生活は、毎朝7時に起きることが要求さ れる社会人にはかなりの重荷だった。 朝と夜を逆に生活していたのだから、リハビリが必要だったのかもしれない。 入った会社は、夜も夕方の6時を過ぎても誰一人帰ろうとしない。 みんなが普通に夜の11時くらいまで仕事をする。 (もちろん残業代なんて出ない) それから飲みに行って、帰りはタクシー。 驚くほど金を使う。 財布に残っていたわずかなお金もあっというまになくなった。 親に電話をして、少し援助してもらう。 この援助には会社の付き合いという「正当な理由」があるので、電話するのも気 が楽だった。 しかし、問題は初めての給料日:4月25日に起こった。 朝、上司から給料明細をもらう。 こっそりトイレに行って見てみると、明細にはこう書かれていた。 4月分給与:115,617円 「えっ!11万円?」 初任給は18万円くらいと聞いていたので、かなり動揺する。 11万円では、借金の返済ができない。 上司に尋ねると、新入社員の4月は、締めの問題で給料が半分になるとのこと。 それはどうでもいい、11万円だと今月の返済ができない。 初任給で借金の返済で悩むなんて・・・。 普通、初任給といえば親にネクタイとかスカーフとかを買うのに・・・。 もちろんそんな余裕はない。 借金を返したところで、家賃・携帯代・生活費は全く無い状況。 とりあえず、今月は「武富士・アコム・アイフル・オリックス」を返済した。 が、「DCカード」と「UCカード」のキャッシングの返済は全く不可能だった。 「毎月、給料日にはこんなことになるのかな・・・」 それにしても、次の給料日まで1万円しかないや・・・。 でも、正社員だと学生やフリーターとは信頼も違うから審査も通りやすいでしょう、 と、変な安心感はあった。 確かに、これ以降カードを作るための審査は簡単に通るようになる・・・。 <2000年4月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:190万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:189,000円  ※支払いが10万円滞る。 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第38回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年5月> 就職して2ヶ月。 現在持っている消費者金融のカードは、全て限度額いっぱい借りていた。 唯一、可能性のあるのが「アコム」に付いている「MasterCard」。 今まではカードに「Acom」の文字がついているので、店などで出すのにどう してもためらいがあった。 「あいつ、借金があるんだ」と店員に思われるのが嫌だったし、キャッシング を限度額いっぱい借りているので、カードが支払いで本当に使えるか不安だった。 しかし、もはやそんなことを言える立場ではない。 昼飯代も無いし、外に営業に行くための交通費もない。 財布には、2,000円しかないのだ。 こんなんでどうやって営業するんだ? そこで、まずやってみたのが電気屋で商品を「アコム・MasterCard」で買って 質屋で売る、という方法。 最初に買ったのは、「MDウォークマン」。 結果は、一番高い3万円くらいのものを買ったのだが、質屋では1万円でしか買 いとってもらえなかった。(一度も使ってないのに) その後、ビデオなども買ってみたのだが、結果は一緒。 買い取り金額はよくて半額。割に合わない。 そして、気がついた。 いい商品があったのだ。 【PS2】 そう、「プレイステーション2」だ。 これはすごい。 この当時、3万円くらいで買って(もちろんカードで)、すぐに売りに行っても 2万5000円くらいで買ってもらえる。 「還元率83%」はすごい!!というよりも、助かる。 しかも、「アコム」の「MasterCard」は支払いのときリボ払いにしなくても、毎月 1万円の支払いでいいのが最高!! どんなに使っても、支払いが毎月1万円で済むのでとても安心だった。 私は、この方法で【PS2】を買いまくった。 毎週土曜日になれば、アコムのカードで【PS2】を買って、すぐに売りに行く。 現金を手にして、パチンコ屋へと・・・。 毎週、この繰り返し。 最高、1日で3回【PS2】を買った。もちろん、3台ともすぐに売って現金化。 2年間で30台は【PS2】を買った。 でも、家に【PS2】が存在した時間はどれくらいあったか・・・。 2・3度しか家のテレビにつないだ記憶がない。 なんで、社会人になってこんなことをしてるんだ・・・。 仕事は楽しい。 会社の同僚や上司・先輩もいい人だ。 なのに、借金を抱えていることは誰にも言えない。 借金をしないと生活できない状態に完全に陥っていた。 会社に行くときのカバンには、いつも印鑑と保険証を入れていた。 お金に困ったら、いつでも新しい消費者金融のカードを作るために・・・。 <2000年5月現在>  ・借入先:6件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード)  ・借入金:194万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:199,000円  ・【PS2】を買った台数:1台  合計:1台 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第39回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年6月> 6月。 厳しい状況に変化は無かった。 手元にあるお金は全てが借金で借りたお金。 しかも、信販系のカード(DCカードとUCカード)はまだ先月分を返済してい ない。 そんな生活をしていると、新聞を見るたびに「消費者金融」の広告が目に入るよ うになる。 「アコム」「武富士」「アイフル」は既に借りているし、あとは大手だと「プロ ミス」しかないかな・・・。 消費者金融の選択方法は、名前を聞いたことがあるかないかが重要で、金利は全 く重要ではなかった。 (この頃は、金利の違いがどれくらい重要か全く分かっていない) でも、新聞の広告でも明らかに異彩を放っていた会社があった。 【モビット】 (その当時)ここだけが「銀行系」であり、そのことを全面的に前に押し出した 広告は私の心を揺さぶった。 「ここなら貸してくれるかも」と、私もかなり期待を抱いた。 平日の昼休みに、会社の自分のパソコンで申し込む。 周りに誰もいないのを確認して、一気に入力する。 申込みの登録は本当にすぐ終わった。 (消費者金融の申込みに慣れてきたのも要因ですね。聞かれることもほとんど同  じですし) 次の日、私の携帯に「モビット」から電話があった。電話の内容は、 1、審査が通ったこと 2、限度額が50万円までOK 3、登録した銀行の口座にお金を振り込めるが、どうする? 4、カードは1週間くらいで自宅に送る この4点だった。 私は少し呆然としながら、「では、20万円振込んでください」と無意識に言っ ていた。 電話を切った後、夢を見ていたかのような感じがした。 今まで、昼飯代にも困っていた男が突然50万円もの大金を手にしたのだ。 (もちろん借金です。でも、この当時は借金という感覚がほとんど無かった) 「でも、よくこんな借金まみれのおれに金を貸すな」と、自分でも思った。 確かにその日、通帳には20万円の振込みがあった。 頭の中には、週末、どこのパチンコ屋に行くかしか考えられなかった。 お金があるということは、人間をとてもわくわくさせる。 お金があるということは、人間に将来への生きる活力を与える。 飲みに行ってキャバクラをはしごしても、財布の中身はほとんど変わらない。 「20万円」というのはとても偉大だった。 (限度額が50万円だから、あと30万円引き出せるし♪) 2000年の6月はかなり快適に過ごすことができた。 1週間後、カードが家に届いて返済方法などを確認すると、なんと毎月「1万円」 でいい!! しかも、いくら借りても返済は毎月「1万円」!! 「アコム」に続いて、「モビット」は私にとって強い味方となった。 あの金色のカードは、絶対持つことができないゴールドガードのようで、持って いても幸せだった。 2年後、この汚くなりだした金色のカードをはさみで半分に切ることになろうと は、この当時、夢にも思わなかった・・・。 <2000年6月現在>  ・借入先:7件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット)  ・借入金:213万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:209,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第40回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年7月> 先月作った「モビット」のおかげで楽しく過ごせている。 仕事が早く終れば、同僚と飲みに行って帰るのは深夜。 時にはキャバクラに行って、気がつくと財布は空っぽ。 朝はギリギリまで寝てタクシー通勤。 こんな生活を2週間続けると、当然お金がなくなる。 当たり前のことだが、気がついたときには「モビット」の限度額50万円に対し て、借入金額が45万円。 「モビット」のカードを作って、わずか1ヶ月で45万円を使ってしまった。 「いったい何に45万円も使ったんだ?」と自問自答してみる。 答えは簡単で、「豪遊」してるから。 しかも、土・日のパチスロが全く勝てない。 (パチスロで1万円使うのはあっという間なので、あえてパチンコを打って時間  をつぶすように努力?もした) でも、結果的に週末が来る度に10万円は余裕で使っている。 「これなら旅行に行ったほうが安上がりじゃん」 我ながら名案である。 土曜日の朝早く起きて、バッグに1日分の着替えと村上春樹の小説、CDウォー クマンを持って鈍行の電車に乗る。 行き先はあえて決めない。 お腹がすいたら途中下車する。 小説を読むのに疲れたら途中下車する。 降りたいと思ったら途中下車する。 と計画をして家を出たのだが・・・。 結局、駅の近くのパチンコ屋が新台入替していたため「ちょっと覗くだけのつも り」で入ったら、夕方まで打つことになった。 全く懲りていない。 でも、決してパチスロがおもしろくて打っているわけではなかった。 正直、最初の1,000円であきる。 (毎週土・日、時には仕事帰りにも打っているのだから飽きるのはあたりまえ) 人間がお腹がすくと食事をするように、時間があったらパチスロを打つようにな っていた。 病気だ。 今になって思うことは、「モビット」の50万円で毎月の返済金額の多いところ を完済しておけばよかったのではないか。 いわゆる「借り換え」である。 (金利の安いところから借りて、金利の高い消費者金融を完済してしまう) たしかに、「DCカード」や「UCカード」のようにキャッシングの返済が毎月 5万円のところを完済しておけばよかったのだ。 (2社の合計返済額が毎月10万円だから、かなり楽になる) そうすれば、毎月10万円前後の返済だからかんばれそうな気がする。 しかも、7月は少しだがボーナスもでる。 「よし!!」 だが、すでに「モビット」からは5万円しか借りることができなかった。 もっと早く気がついていればよかったのだ。 もっと「計画的」に行動すれば・・・。 本当に何もかも捨てて旅にでたくなった・・・。 <2000年6月現在>  ・借入先:7件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット)  ・借入金:237万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:209,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第41回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年8・9月> 8月のある日。 朝、会社に来ると同僚が話し掛けてきた。 「今年の社員旅行、ハワイに決まったって」 そういえば、入社するときに社員旅行があるとは聞いていたが、まさかハワイに 行けるとは思わなかった。 私 :「まじで?それで、行くのっていつだっけ?」 同僚:「来月。2泊3日だって」 私 :「すごいじゃん。旅行のお金は誰が払うの?」 同僚:「飛行機代とホテル代は会社が払ってくれるみたい。でも、ハワイで遊ぶ     金は自分で払わないと」 お金の無い人間にとって、海外旅行ほどつらいものはない。 何をするにもお金がかかるし、食事代もハワイは高い。 海で泳いでいたらお金がかからないとは思うが、なんとか5万円は持っていきた い!! お金の工面を考えるが・・・。 8月の給料は(8社の)借金の返済で全てが消えた。 「モビット」からは5万円借りて旅行代にあてようとしたのだが、いつものよう にパチスロに消えていく。 「どうしよう・・・」 結局、ハワイには2万円しか持っていくことができなかった。 最悪・・・。 スキューバーダイビングをするのにも、ジェットスキーに乗るのにもお金がかかる。 食事をすると、20〜30ドル(3,000〜4,000円)は普通に支払うことになる。 VISA付きのカードもあるが、支払いが滞っているので使うことができない。 初日で、あっさり100ドルが無くなった。 夜は「具合が悪くなった」と言って、みんなが遊んでいる時にホテルで寝ることに した。 仮病でも使わないとお金が足りなくなって、お金がないことがみんなにバレてしま う。 わざわざハワイにまで来て、1人でホテルのテレビでNHKを見てる自分が本当に 情けない・・・。 お金の心配をしなくてもいいので、帰りの飛行機が一番幸せだった。 3日ぶりにアパートに帰ってくると、留守電が点滅している。 「・・・、お支払日にご指定の口座から引き落としができませんでした。1度、  ご連絡をいただけませんでしょうか?電話番号は・・・」 「アパートの管理をしている○○の武田と申します。今月のお家賃の引き落としが  確認できませんでしたので、こちらまでお電話をください。電話番号は・・・」 「・・・、今月のお支払いが確認できておりません。確認できるまで、カードのご  利用は停止させていただきます。ご連絡をください。電話番号は・・・」 最悪だ・・・。 帰国早々、借金問題に直面するなんて・・・。 「モビット」も限度額いっぱい借りちゃったし、またカードを作らないといけない かな・・・。 <2000年6月現在>  ・借入先:7件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット)  ・借入金:241万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:209,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第42回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年10月> 時々行くキャバクラに、新人の女の子が入った。 今までお気に入りの子がいたことはあったが、はっきり言って「彼女にはどっぷ りはまってしまった・・・」 これが「借金増大」の速度を速める要因となった。 その日から、週に3度は仕事帰りに会いにいった。 彼女は地元の短大生で、顔は「広末涼子」似でかなり好み・話も楽しく、彼女の ことを考えてると仕事も楽しくでき、毎日が幸せだった。 ただ、問題がひとつある。 それはもちろん「お金」。 1度行くと、1セット(45分・5,000円)では収まらず、確実に延長をするので、 合計「10,000円」は支払っていた。 もちろん現金は無いのでカードで払うのだが、毎回行くたびにカードで払うと、 彼女も心配になり「お金大丈夫?無理しないで」と言われる。 男の見栄もあり、時には無理やりお金を工面し、「今日は現金で支払うよ」と言 ったりもした。(カードでPS2を買って、転売し現金化) だが、行く回数が今月15回を超えたとき、カードのローン限度枠がいっぱいに 近づき、「やばい?」と自分でも気がついた。 店に行って支払いの時に困るといけないので、店に行く前に電話でローン会社に 電話をして「ローンはあといくら使えます?」と確認してから店に行く。 「そんなにギリギリの状況でキャバクラに行って楽しい?」 だが、その時は自分の借金状況が【危険】だとは思わなかった。 10月某日、ついに【命綱】の「UCカードのローン枠」がいっぱいになり、彼女 に会いにキャバクラに行くことができなくなった。 彼女からは毎日電話が来て、「最近仕事が忙しいから行けない」と嘘をついた。 それがしばらく続いて、遂に彼女から電話が来なくなった・・・。 最後に残ったのは「ローン枠を使いきったUCカード」だけ。 そして、ふと思う。 「支払いを全部一括にしてるってことは、来月の支払いはいくらになるんだ?  見栄をはらずに【リボ払い】にしておけばよかった・・・」 ※アコムの「masterカード」があるのだが、彼女の前ではアコムのカードは絶対 に使えない。 借金があることは【最強のマイナス要因】だから・・・。 2ヶ月後、「21万円(キャッシングを含め)」の支払いがUCカードから届い た時、完全に途方に暮れた・・・。 <2000年10月現在>  ・借入先:7件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット)  ・借入金:256万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:209,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第43回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年11月> ここで、2000年11月時点での借金の状況をお知らせします。  <名前>    <借入額> <毎月返済額> <限度額> <借入可能額> ・武富士      500,000 30,000 500,000      0 ・アイフル 500,000 24,000 500,000      0 ・アコム(金) 500,000 15,000 500,000      0 ・アコム(ロ) 10,000 10,000 300,000   290,000 ・モビット 500,000 10,000     500,000      0 ・オリックス 300,000 20,000     300,000      0 ・DCカード 50,000 50,000     50,000      0 ・UCカード(金) 50,000 50,000     50,000      0 ・UCカード(ロ) 150,000 10,000     150,000      0 ※ 金=キャッシング、ロ=ローン ご覧の通り、借入金額は「256万円」、毎月の返済金額が「21万9千円」に なっていた。 でも、この時期の私は借入状況を全く把握していないので、借金は130万円く らいだと思っている。(完全な誤解) むしろ、「毎月、返済だけで給料がなくなるのはおかしいな〜」とさえ思ってい たのだ。 11月になると、スーツも冬用を買わないといけない。 現金は当然無いのだが、頼もしい「アコム・mastercard」がまだ使えたので、 冬用のスーツをローンで2着買った。 2着で5万円。 ローンなので、「お金を払った感覚」は全く無い。 それにしても、【現金が無い】ということは本当に精神的にこたえる。 私の場合は本当に金がなく、会社に行くための電車賃もなければ、その日の昼飯 代もなかった。 財布の中に【20円】しか持たずに会社に行ったこともある。 その時、本当に「会社の備品(テレビやビデオなど)を盗んで質屋に売ってやろ うか」と思った。 会社の同僚からの飲みの誘いも断らなければない。 家に帰っても、食べるものがなにもない。 米も無いし、インスタントラーメンも無い。 家の留守電が光っている。 なにかメッセージが入っているようだが、家賃の督促の電話や借金の延滞に関す るメッセージだと思うので聞かない。 ここ数年で確実に友人は減った。 地元に帰るお金もないし、こっちで友人と遊ぶお金もない。 そして、ここ数ヶ月で最も大きい変化が起きている。 【パチスロするお金が無い】 今まで、どんなにお金が無くても週末には「2万円」は工面(借金など)して パチンコ屋に行っていたのが、パチンコ屋に行くお金も作れないのだ。 「PS2をローンで買ってすぐに売る」というワザも、毎週だと店員に怪しまれ るので、月に2〜3回程度にしていた。 11月。 ついにまた新しいカードを作る。 今度も、インターネットで申し込む方法をとった。 そのカードの名は、 【プリーバ(Priva)】 その当時、メインキャラクターが「真鍋かをり」だったのだが、テレビや雑誌の 露出が極端に少ないので、知っている方は「通」ですね。 結局、「プリーバ」では限度額「30万円」で契約ができた。 しかも「銀行自動引き落とし」が可能なので、返済に行く必要は無かった。 電話対応だったのだが、今までで一番対応がよく、「プリーバだけは返済を遅ら せないぞ!!」と、心に誓った。 「よし。このプリーバでもうカードは作らないぞ!!」 と、その時は本当に思った。 が、現金を手にした途端、また悪い癖がでてくることになる・・・。 <2000年10月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:261万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:229,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第44回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2000年12月> ついに来た!! 待ちに待っていた【冬のボーナス】をもらえる12月20日が来た!! 先輩の情報からいくと、どうやら「月給の1.5ヶ月分」もらえるようだ。 金額でいうと「約30万円」。 めちゃめちゃ嬉しい♪ でも、これをどう使うか・・・。 まず、11月の家賃を滞納しているので、これが「6万円」。 「UCカード」と「DCカード」も滞納しているので、両方で「10万円」。 あと、今月分の借金の支払いをすると・・・。 「あれ、全く残らない!!」 12月の返済金額の合計は「約23万円」。 むしろ、ボーナスを全部使っても「9万円」足りない。 12月分の給料で足りない分を補って、給料の残りが「9万円」。 12月分の家賃を払うと・・・。 「3万円しか残らないの・・・」 この計算を家で解いたとき、体に電流が走った。 「もしかして、俺は今、とんでもない状況に陥っているんじゃないのか・・・」 ボーナスをもらっても、返済したら1円も残らないって、かなりヒドイ。 というか、毎月の給料だけだと生活ができないってこと。 「落ち着いて考えろ。  どうすればいいんだ?  来月の給料まで、3万円で過ごせばいいのか?  いや、電気代や携帯代もあるから、これで「1万円」はとられる。  ということは、「2万円」で30日過ごすと言うことは・・・、無理だ」 「はぁ〜。  どうしよう・・・」 目の前には、すでに行き先が決まっている「30万円」が現金で置かれている。 「よし、節約するために、自炊しよう。  じゃあ、まずは米を買わなうといけないな。  米は5キロで3,000円もあればいいから・・・」 しかし、財布には米を買うには多い金額、「5万円」を入れていた。 「ボーナスのご褒美に、1万円だけパチスロやってもいいよね」 自分に言い訳をしつつ、パチンコ屋に急ぐ。 正月で会社が休みの間、毎日パチンコ屋に通うことになる。 返済すべきお金はパチスロへと簡単に消えていき、結局「プリーバ」から借りた お金で別の消費者金融の返済にあてた。 「276万円」の借金を残して、2000年が終った。 <2000年12月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:276万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第45回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年1月> 悪魔は突然やってきた・・・。 給料日、いつものように借金の返済へと向かう。 駅近くの「借金ビル」と呼んでいる消費者金融が密集しているビルへ入っていく。 いつものパターンで返済していく。 まずは返済額の多いところから返して、それでまた借りられるだけ借りて次の 返済にまわす。 まずは「武富士」。 問題なく返して、また限度額いっぱい借りる。 そして、「アイフル」。 「あれ?【借入可能残高】が0円だ。おかしいな?」 いつもだと、返済した後は2万円くらいは借りることができていたのが、なぜか 【借入可能残高】が0円。 確認しても、本当は「2万円」は借りることができるのに、おかしい。 とりあえず、ATMに取りつけてある電話を手にとる。 私:「すいません。お金を借りたいんですけど、急に借りることができなくなった    んですが」 ア:「申し訳ございません。では、お客様の会員番号を教えてください」 私:「○○○です」 ア:「では確認します。そうですね、お客様にはお貸しすることはできないですね」 私:「はっ?なんでですか?」 ア:「お客様の借入状況だと、これ以上お貸しできないんですよ」 私:「えっ、でも、今まで借りれてましたよ」 ア:「ここ何ヶ月かで、新規で他の会社からお金を借りてますよね」 私:「・・・はい」 ア:「それが原因です。もちろん、これから返済していただいて借入状況がよくな    れば、再び借りることは可能ですよ」 私:「じゃあ、今日は借りれないんですか?」 ア:「そうですね」 私:「分かりました・・・」 完全に計算が狂った。 とりあえず、「アコム」と「モビット」と「プリーバ」を返済する。 でも、1ヶ月延滞している「UCカード」と「DCカード」の合計:10万円が返済 できない。 さらに、家賃(6万円)も1ヶ月延滞している。 「やばいな・・・」 仕事をしていても、なにかひどく不安に感じる。 仕事中に督促の電話が会社にまでかかってくるようになった。 金融関係の場合、電話先の相手は必ず【個人名】で電話をかけてくる。 金融:「すいません。私、山崎と申しますけど、営業の松下一樹さんいらっしゃいます     か?」 同僚:「はい、おります。少々お待ちください」 当然、電話をとった同僚は大声で私をこう呼ぶ。 同僚:「お〜い、松下!!山崎さんという人から電話!!」 周りの上司は耳をそば立てている。 私:「・・・、はい。その件に関しては、すぐに対応します」と、ごまかす。 ただ、こんな電話が何度も続くと周りの目が厳しくなっていった。 でも、とにかく先月分の延滞は返さないといけない・・・。 週末、カードローンで「PS2」を4台買って現金にした。 「UCカード」と「DCカード」は返済したが、家賃は大家に電話をして待ってもらえ るようになった。 ただ、とても気になることがある。 「アイフルで借金ができなくなるってことは、もうどこもお金を貸してくれないんじゃ  ない?」 その通りだった・・・。 <2001年1月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:287万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第46回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年2月> 最近は仕事がいそがしい。 帰りが毎日夜の12時近くになっている。 先月の「アイフル借入不能」事件以来、返済が確実に困難になっていた。 どうしようもないくらいの不安を覚える・・・。 でも、会社では「借金」のことは全くの秘密だったし、今さら相談してもどうに もならないのは自分でも分かりかけていた。(あえて分かろうとしなかった) 【増額】 この言葉を完全に忘れていた。 以前、無意識の内に【借入限度額】を増額して助かったことを・・・。 2月某日、仕事で外回りをしていると、携帯電話が鳴った。 私 :「はい、松下ですが」 男 :「もしもし、こんにちは。ご無沙汰しております。武富士の山本ですが」 私 :「(面倒くさそうに)はあ、どうも」 山本:「今、お電話は大丈夫ですか?」 私 :「はい、別にいいですよ」 山本:「松下さん、毎月返済ありがとうございます」 私 :「いいえ」 山本:「松下さんのように、毎月きちんと返済していただくお客様がいらっしゃ     って、当社もとても助かります」 私 :「そうですか(武富士はきちんと返済してたんだな〜)」 山本:「それでですね、現在、松下様はお金のほうは余裕がおありですか?」 私 :「まあ、なんとかやってますよ(余裕があるわけね〜じゃねえか!!)」 山本:「もし、よろしければ限度額の増額をお願いしたいんですが。といっても、     無理にお金は借りなくても結構ですよ。限度額だけ今の内に増額してお     けば、松下様が急にお金に困ったとき役立つのではないかと」 私 :「(平静を装って)そうですか。じゃあ、限度額だけ増やそうかな」 山本:「ありがとうございます。それでは、松下様のご都合のよい時に印鑑を持っ     て、1度こちらに寄っていただけないでしょうか?契約書を変更しないと     いけないので」 私 :「今すぐに行きます!」 山本:「(びっくりして)でも、印鑑はお持ちじゃないですよね?」 私 :「いや〜、今日、偶然印鑑を持ってたんですよ。偶然に!」 山本:「そうですか!では、当社夜の7時までやっておりますので」 私 :「わかりました。今から30分以内に行きます!!」 電話を切った後、心臓がバクバクなっていることに気がついた。 「やった!!!!!」 すぐに頭の中に浮かんだのは、週末、どこのパチンコ屋でパチスロを打つかだった。 武富士に行くと、簡単に「30万円」の増額ができた。 新しい契約書を書いているときに、店の中に1人の中年が入ってきた。 中年 :「いや〜、困った、困った。財布を落としちゃって家に帰れね〜や」 武富士:「(淡々と)そうですか。それで、当社にはどんなご用ですか?」 中年 :「(困ったように)10万円ほど貸してほしいんだけど」 武富士:「では、この書類の太い枠の部分だけ書いてもらえますか?」 毎日、消費者金融にはこんな感じの嘘をついて金を借りにくるんだろうな〜、と隣 で見ていて楽しかった。 武富士を出てから会社に戻った。 限度額を「30万円」増やしたことにより、自然と笑顔がこぼれる。 仕事も妙に楽しいし、お金があることがこんなに人をイキイキさせるんだ、と実感 した。 とりあえず、その日の内に武富士から「20万円」借りて、延滞している先月分の 「DCカード」と「UCカード」を支払った。(合計:10万円) それでもまだ「10万円」残っている。 が、なぜかその日は真っ直ぐ帰った。 家に帰り、2週間ぶりに家の留守電を聞く。 「キュルキュル、ピー。2月14日、20時24分、83件です」 83件の内、9割は無言で、残りは家賃の催促と借金の催促の電話だった。 ただ、1件の留守電が【高校の同窓会】を知らせる友人からの電話で、聞いた時に はもう同窓会は終っていた。 借金をしてから、だんだんと友人が減っていく・・・。 携帯電話の着信履歴を見ると、【自分の会社】と【非通知設定】だけだった・・・。 <2001年2月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:305万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第47回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年3月> 就職して1年、なんとか無事に終われそうな気がした3月。 先月インターネットで申し込んでおいた「オリックス」への増額の申請が、今頃 になってOKの返事がきた。 借入限度額が多い分には全く困らないので、とりあえず増額をする。 その結果、30万円の限度額が【50万円】まで増えることとなった。 「オリックスであと20万円借りれるんだったら、毎月の返済金額が多い武富士  を返済しようかな。そうすれば、毎月の返済金額が減るかも」 確かにそうだった。 これをすることにより、毎月の返済額がわずかではあるが「5,000円」少なくなる。 しかも、今考えると「金利」の面でもこの作戦は正解だった。 が、実際は「オリックス」から借りた20万円は、「武富士」の返済に当てること なく、数日の内にパチスロへと消えていった。 パチスロで負けたときは、家に帰る途中いつも【自己嫌悪】に陥る。 「なんで?なんで?なんで?なんで?  そんなにパチスロが楽しい?ねえ、なんで?なんで?  本当にもうヤバイよ。財布の中にあるお金って、全部“借りたお金”だよ。  ねえ、分かってる?  まじで、まじで・・・」 最近はパチスロで勝った時も【自己嫌悪】に陥る。 「今日は勝ったけどさ、すごく時間を無駄に過ごしてるよね。  20代って、今しかないんだよ。  パチスロとかパチンコなんて、60歳過ぎてもやれるじゃん。  でもさ、女の子と遊んだり、海に遊びに行くのって今しかできないよね。  なのに、あんた何してんの?  借金ばっかり増えて。  まじで、ヤバイよ。まじで」 3月のある日、家に帰ると郵便受けに1通の封筒が入っていた。 裏には宛先が全く書かれていない。 すごく嫌な予感。 階段を上りながら、いそいで中を見てみると、一瞬目の前が真っ暗になった。 それは「オリックス」からの手紙だった。 <松下様 いつもご利用ありがとうございます。  まことに申し訳ないのですが、審査をした結果、お客さまの借入状況の  状態ですと、現在の【限度額50万円】を変更しなければなりません。  現在のお客様の状態ですと【限度額20万円】が適切という審査結果がで  ております。  お手数ですが、【4月10日】までに差額分の【30万円】を【一括返済】  していただくようお願いします> 私は何度も読みなおした。 読めば読むほど、体に悪寒が走る。 「はあ〜?どうやって【30万円】なんか払うの、無理に決まってんじゃん。  でも、これって払わないとかなりまずいよね・・・。  会社に電話は当然くるよね。  実家にも電話がいくかな・・・」 武富士以外は限度額いっぱい借りているので【30万円】を工面するのは無理。 (武富士はあと10万円は借入可能) 4月10日まで、あと2週間しかない・・・。 あと2週間で絶対【20万円】を作らないといけない・・・。 「10万円を元手に30万円にする!!」 簡単に考えると、10万円を3倍にすればいいだけのこと。 そんな意気込みでパチスロをした。 結果は・・・。 4月10日まで、あと【30万円】作らないといけなくなった・・・。 <2001年3月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:333万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第48回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年4月> 先月「オリックス」から突然勧告された「4月10日までに30万円を一括で 返済しろ」という無謀な話。 そのおかげで4月は毎日お金の工面ばかり考えていた。 だが、4月に入っても【30万円】を返すアテは全く見つからない。 頭の中に思い浮かぶのは、「別の消費者金融で30万円借りればいいじゃん」 という最悪の考えだけ。 他にお金を作る手段があればそんなに悩まないのだが、残念なことに結局のとこ ろ、おれを救ってくれるのは【サラ金】しかないのだ。 「でも他から借りると、もっとおれの借入状況が悪くなって、オリックスから  【50万円】全額返せって言われるんじゃない?」 悩む、悩む、悩む、悩む・・・・・・・。 どうすればいいんだ?どうすれば・・・。 アコムや武富士などの返済手段も考えないといけないので、「オリックス」のこ とだけを悩んではいられない。 仕事をして、悩んで、仕事をして・・・。 そして、4月9日。 ついに、リミットまで【あと1日】と迫った。 「ヤバイ・・・。30万円どころか10万円も用意できなかった。  なんとか工面して4万円か・・・」 リミットは目の前まで来ている。 あとは、とにかく開き直るしかない。 「よし、オリックスに電話してやる!!」 会社の昼休み、近くの公園の公衆電話に急ぐ。 私:「もしもし、すいません」 オ:「はい、いかがいたしました?」と、優しい女性の声。 私:「返済のことで相談があるんですが・・・」 オ:「かしこまりました。それでは、お客様のお名前と会員番号を教えていた    だけますか?」 私:「松下一樹。番号は、4567ー・・・です」 オ:「はい、ありがとうございます。それでは、お調べしますので少しお待ち    ください」 数分後・・・。 オ:「もしもし」と、ドスの効いた男の人の声。 私:「(急に女性からおっさんに変わったので慌てる)あっ、もしもし」 オ:「すいませんねー。それでね、松下さん。あなた、他から結構借りてるね」 私:「あっ、あっ、はい・・・」 オ:「手紙にも書いたんだけど、今の松下さんの状態だと50万円をお貸しする    のは無理なんだよね。そのへんは分かる?」 私:「はい・・・、分かります」 オ:「差額分の30万円を返済してほしいんだけど、返せます?」 私:「なんとか今お金を工面してるんですけど、30万円はちょっと無理かもし    れません。でも、絶対きちんとお返ししますんで」 オ:「じゃあ、明日締めきりだけど、いくらなら返せます?」 私:「3万円・・・、いや、なんとか4万円はお返しできます」 オ:「そうですか・・・。で、残りはどうするつもり?」 私:「(ここで1つの考えが思い浮かんだ)今って毎月の返済が2万円じゃない    ですか。それをですね、3万円にするのでいかがですか?」 自分で言ってから、【なんて無謀な提案】と自分ながら驚く。 オ:「分かりました。でも、本当に毎月3万円払えますか?」 私:「えっ?(予想もしない返事に驚く)    だ、大丈夫です。きちんと、3万円は払えます。夏にはボーナスもあるので、    そこでまとめて返済できると思います!!」 オ:「じゃあ、再来月分から返済は3万円で。それと、しばらくの間は追加の融資    はできないんで、がんばってください」 私:「はい!ありがとうございます。がんばります!!」 ヤッターーーーーーー!! ヤッターーーーーーー!! 今までの不安はいったいなんだったのか、もっと早く電話してればよかった。 【30万円の一括返済】が【毎月3万円の返済+4万円の振込】で済んだのだ。 この時、「全額返済」したような【勝利感】が体中にほとばしった。 電話BOXから出ると、びっしょり汗をかいていた。 すぐに近くの銀行に行き、約束の【4万円】を「オリックス」に振り込む。 だが、振り込んだ後に気がつく。 財布の中には「3千円」しか残ってない。 給料日までまだ2週間以上もあるのに、どうやって暮らしていくのか。 先月の家賃も払っていない・・・。 銀行から会社へ戻る途中、電信柱に貼られている「30万円まで審査なし」の 張り紙に目がいく。 「審査がないんだ・・・。おれでも借りれるのかな・・・」 もう後戻りできないところに自分がいることにまだ気がついていない・・・。 <2001年4月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:328万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第49回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年5月> 今月、わが社の決算が予想よりもよかったということで、なんと臨時ボーナスが でた! 金額も、1人に【10万円】!! 社内では、「今夜どこに飲みに行く?」など、みんな笑顔。 私は「どの返済に当てるかな・・・」と、全く夢が無い。 だが、この「10万円」は大きい。 というか、(今計算すると)毎月の返済額が「234,000円」なのだから、 給料だけでは足りない。 もちろん、毎月の家賃もあるし、食事代もある。 頭では「どこの返済に充てればいいか?」と考えるのだが、財布の中に「10万 円」が入っていることで【あの病気】が出てしまう。 「1万円だけ。1万円だけ、あの新台のパチスロを打たせて」 仕事も早々に終え、会社近くのパチンコ屋へと向かう。 30分後・・・。 「あと1万円だけ。まだ閉店まで時間もたっぷりあるから」 1時間後・・・。 「なんだこの台!!何万円使ったら出るねん。絶対出す!!」 (精神状態が少しおかしくなる) 2時間後・・・。 「ちょっと、まじで?もう5万円も使ってるじゃん。この5万円があったら、家賃  を払えたのに・・・」 (後悔しながらのパチスロ。でも、自ら止めることはできない) 22時50分、店内で「蛍の光」がかかり始める。 結局、閉店までの4時間で【7万円】の負け。 精神も肉体もボロボロになったので、タクシーで帰る。 外には楽しそうに酔っ払っているサラリーマンが見える。 次の日、会社で仕事をしていると内線が鳴る。 私:「はい、松下です」 男:「松下、なんかお前のお母さんから電話がきてるぞ」 私:「母親?」 男:「ああ、松下の母って言ってるから」 私:「なんだろう?すいません、ちょっと出てみます」 すごく嫌な予感がする。もしかして「借金」がばれたのか・・・。 私:「もしもし」 母:「ちょっと、一樹!あんた、電話代払ってないの?」 私:「(すごく驚いて)なんで?」 母:「ずっと家に電話しても出ないし、今電話したら、お客様の都合で電話を止め    てるってなってるし。あんた、お金大丈夫なの?」 私:「(平静を装って)ああ、そのことね。携帯あるから家の電話は止めてるんだ    って」 母:「なら、いいけど・・・。じゃあ、連絡するときは携帯にすればいいんだね?」 私:「ああ。携帯にして」 母:「本当にお金は大丈夫なんだね。電話代、お母さんが払おうか?」 私:「いいって。家の電話は使わないから。もう切るよ」 母:「うん・・。お母さん、心配になって・・。会社の人に宜しく言っておいてね」 私:「分かったから」 電話を切った後、周りの同僚に言い訳をする。 母親から会社に電話があったら、当然何事だと思う。 おそらく母親はこの時点で「なにか怪しい」と思ったに違いない。 しかし、私は【最後】までバレないように装い、結果、最後までバレなかった。 果たして良かったのか悪かったのか・・・。 命の綱の「夏のボーナス」がでる7月まで、あと2ヶ月。 このボーナスで借金の元金をどれだけ減らせるか、これが重要だった。 周りの同僚は「夏のボーナスで海外旅行に行く」と言って楽しそうなのに対し、おれ はいったいなんなのだろう。 おれはいったい何をしているのか・・・。 もう後には戻れない。 誰にも相談できない。 会社帰り、借入が禁止になった「アイフル」のATMに行く。 無理だと分かっていても、「アイフル」のカードをATMに入れてみる。  【借入可能金額:0円】 この文字を見ないと納得できない。 もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら・・・。 こんなことを考えながら月に10回は「アイフル」のATMに行くのだった。 もちろん「オリックス」にも同じことをする。 もしかしたら、機械の故障で借金が「0」になっているかもしれない。 【奇跡】を求めるようになった。 自分の力だけでは返済が無理なことは分かっていた。 ただ、まさかおれが「多重債務者」になるなんて思いもしなかった。 浪人して、国立大学の経済学部に入ったのに。 なんで、おれが「多重債務者」なの? そんな肩書きはいらない!! まるで【犯罪者】のような目で世間から見られる肩書きは・・・。 <2001年5月現在>  ・借入先:8件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ)  ・借入金:344万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:234,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第50回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年6月> ボーナスまで、あと1ヶ月と迫った6月。 近頃、急に飲みに誘われることが増えた。 もちろんお金が無いので断ればいいのだが、夜を迎えると甘い誘惑に負け、つい つい飲みにいってしまう。 もちろん支払いは「カード」。 今までは「PS2の転売」以外では利用しなかった「アコムmasterカード」だが、 最近は普通に飲み屋で使うようになった。 (その場で「リボ払い」と言わなくても、支払いが「リボ払い」になるというメリ  ットもある) しかし、現金が財布に無いということは非常に恐ろしい。 急な出張でも、会社から【前借り】をしないといけない。 上司には、「おまえ、1万円もないのか?」と、冷めた目で見られる。 「ないものはないんだ」と、心の中でつぶやく。 6月のある日の朝、いつものように目を覚ましテレビの電源を入れるが、画面が映 らない。 部屋の明かりもつかない。 「停電?」 確かに、家の電化製品は全く動かない。 「なんだよ、朝から停電なんて、最悪・・・」 ぶつぶつ言いながら、はみがきをしているときにふと気がつく。 「もしかして【停電】じゃなくて、電気を止められたんじゃないの?」 そう思いついたとき、頭の中の色々な情報が一つに結ばれた。 1、最近、電気代を払ってないこと 2、1週間くらい前に「イエローカード」が郵便受けに入っていた。    ※イエローカード:電気代の支払いが滞っているとき、あと1週間で電気を     止める旨を書いた勧告書。 3、数日前、「レッドカード」が届いていた。    ※レッドカード:あと数日で電気をとめること。            料金は電力会社に直接支払わないといけない。 支払いが滞っている電気代を計算すると、2ヶ月分で「1万5千円」。 「無理だ。1万5千円なんて無いよ・・・」 とりあえず出社するが、電気代をどうするかで頭が一杯で、仕事に身が入らない。 本当に電気を止められたのは初めてだったので、とても恐ろしく感じられた。 「電気代を今日払わないと、家に帰っても真っ暗なんだよね。テレビも見れないし、  風呂にも入れない・・・。もうサラ金しかないか・・・」 仕事中、パソコンで消費者金融を探していると、会社に近いところにある消費者金融 をひとつ見つけた。名前は 『キャスコ』 会社の昼休み、急いで向かう。 かばんには「印鑑」と「健康保険証」は常に入れていたので、いつでも新規契約が できる。 「キャスコ」の対応はよく、話はすんなりすすんだ。 キ:「・・・、ありがとうございます。松下さまは現在他の消費者金融から借入は    ありますか?」 私:「はい、あります」 キ:「では、こちらに借入先のお名前と金額を記入してください」 私:「(恥ずかしそうに)すいません。これって5社までしか書けないんですか?」 キ:「えっ?5社だと足りません?」 私:「すいません・・・8社なもので・・・」 キ:「(あきれたように)では、その枠外にでも書いてください」 申込書を書いて10分くらい待つと結果がでた。 キ:「松下さま、お待たせしました。今回、残念ながら・・・」 私:「(まじで、審査が通らなかったの?)」 キ:「残念ながら、希望額の30万円では審査が通りませんでした。そこで、数字    を変えてやってみましたら『限度額:20万円』ならOKが出たんですが、    いかがいたしましょうか?」 私:「(興奮して)いいです、いいです。20万円でお願いします」 キ:「ありがとうございます。では、本日からお借りすることができますが?」 私:「(ちょっと考えて)じゃあ、5万円ほど貸してもらえますか?」 キ:「分かりました。では、お手配をいたしますので少々お待ちください」 助かった・・・。 「キャスコ」を出たその足で電力会社に2ヶ月分の電気代を支払いに行く。 これで夜に帰ると電気は復活するとのこと。 しかし、よくよく考えると今回2つの初体験があった。 1つ目は、「電気が止められたこと」。 そして、2つ目は「希望額で審査が通らなかったこと」 こんなことは今まで1度もなかった。 もしかして俺って末期なの? いや、大丈夫。来月は待望の『夏のボーナス』が出る。 が、会社に戻ると嫌な情報が流れていた。 『夏のボーナス、完全カット』 目の前が真っ暗になった。 <2001年6月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:357万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:242,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第51回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年7月> 7月に入っても、ボーナスがでるかどうか全く分からない。 普通なら事前に報告があると思うのだが、いかんせん中小企業なのでかなり アバウトである。 が、7月10日ころ、遂に発表された。 【今年の夏のボ−ナスは、1.5ヶ月分(7月20日振込)】 1.5ヶ月分ということは、金額にすると「30万円」。 一般企業ならもう少し多いと思うのだが、今はそんな贅沢は言えない。 もらえるだけ十分なのだ。 早速使い道を考える。 夏用のスーツも欲しい。 欲しいゲームもある。 靴もボロボロだ・・・。 いや、待て。まずは借金の返済を考えないといけない。 滞納している家賃2ヶ月分で「10万円」。 DCカードとUCカードで「10万円」。 残りの10万円を今月分の借金の返済にあてると・・・。 「全く残らないじゃん!!」 しかも、今月分の家賃を普通に払うと、今月の給料も無くなる。 食費は当然ない。 「まじで?ボーナスもらっても全然足りない・・・」 情けない。 本当に情けない・・・。 ただ、気持ち的にはまだちょっと余裕がある。 理由は、先月作った「キャスコ」がまだ15万円ほど使えるから。 【お金が借りられることが幸せ】 ボーナスが振り込まれる7月20日。 興奮しているのか、いつもよりも早く目がさめる。 会社に行く前に銀行のATMで残高照会をしてみると、 【残高:192,164円】 なにこれ? とっても微妙な数字だ。 「30万円」が振込まれていたらこんな数字にはならない。 【残高:300,453円】という数字が出ると思っていたのだ。 すぐに通帳記入をすると、忘れていた名前が現れた。 【引き落とし 山本新聞店:72,000円】 ここ2年くらい払っていなかった新聞代が引き落とされている!! しかも「72,000円」!! あまりにも予想外のことに、ATMの前でしばし呆然とする。 が、山本新聞店に抗議するわけにはいかない。 どう考えても、新聞代を払っていない私が悪いのだから・・・。 これで計算が狂った。 2ヶ月分の家賃と「DCカード」「UCカード」の支払いで完全に ボーナスがなくなる。 その日の会社の帰り、「キャスコ」で3万円を借りた。 まさか、ボーナスの日に返済ではなくお金を借りるために「キャスコ」 に行くとは思いもしなかった。 「かなりヤバイな・・・」 感覚的にそう感じた。 どう計算しても借金をしないと今月分の返済が終わらない。 いったいどうすればいいのだろう・・・。 どこで失敗したんだろう・・・。 あぁ・・・。 だれか助けてくれないかな・・・。 100万円落ちていないかな・・・。 親が死んだら遺産とかもらえるのかな・・・。 「親の死」まで考えるようになっては、人として終わり。 でも、助かる道が全く思いつかない。 今から一生懸命に働いても、借金の返済がそれを上回る。 (今の仕事が土・日出社もあるので、土・日働くことは困難) 遅すぎたのだ・・・。 もう少し早ければ、助かる道はあったのかもしれない。 多重債務へのプロセスが分かっていれば、その当時の自分と照らし合わせ、 「おれって、多重債務者のレールに乗ってる?」と気がついたかもしれな い。 全て結果論ではあるが・・・。 この当時は、まだ【なんとかなる】と思っていた。 神様がいるのなら、きっとおれを助けてくれるはずだ。 今まで大きな困難の時には、努力して必ず成功していたじゃないか!! 会社近くの宝くじ売り場で、「ロト6」と「ナンバーズ4」を1万円分買っ てみた。 当たりとは程遠かった・・・。 努力をしないと、神様も近寄らなくなる。 とにかく「冬のボーナス」がでる12月までがんばるしかない・・・。 がんばるしか・・・。 <2001年7月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:360万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:242,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第52回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年8月> 「UCカード」と「DCカード」は、支払いが遅れると遅れた日数分キャッシン グができない。 例えば、7月5日の支払いを5日間遅れて支払うと、通常は7月10日にキャッ シングできるはずが、5日間のペナルティーが発生し7月15日以降にならない とお金を借りることができなくなる。 最近は返済が滞っていたために、キャッシングできる時期も遅れていた・・・。 そして、再びその時はやってきた。 「DCカード」のカードを某地方銀行のATMに入れた瞬間、「プシュー」とい う音とともに消えていったのだ。 画面には、 『このカードはこちらで預からせていただきます』 の文字。 この言葉を見た瞬間、「前にも同じ事があったなあ〜」と少し懐かしくなった。 以前は混乱して備えつけの電話から苦情を言ったが、今ではその理由がはっきり と分かる。「お前の借金が多過ぎるのだ!!」             ※第22号を参照(「JCBのカードが消えた」篇) が、「これでお金を借りられないや。ま〜、しょうがない」と、【借金ができな い】ことで少しほっとする自分もいた。 犯罪を犯して逃走している犯人が警察に捕まった時、 「捕まえてくれてありがとう。ほっとした」と言う気持ちとどこか似ている。 誰かが強制的に止めないと、どんどんエスカレートしていくのだ。 それは自分でも止められない。 ただ、「DCカード」で借りた5万円で返済しようとした計画が崩れたことは事実 で、なにか別の金策を講じないといけない。 「借金しかないよな・・・」 結局、今の自分はお金を借りるしかないのだ。 延滞はしているのだが、督促の連絡がまだこなかったので、【信販系】に申し込み をしてみた。(銀行や店の角に空いてある申し込みの封筒で) 1週間で申し込んだ【信販系】は、 ・日本信販 ・OMC ・イオン ・ライフ ・シティバンク ・ジャックス ・GCカード ・アメリカン・エキスプレス ・クオーク ・JCB(これは2度目の挑戦) の全部で10社。 これだけ申し込むと書くのに慣れてしまい、最後の数社は5分もかからずに申込書 に記入することができた。 「こんなことに慣れるなんて情けない・・・」 そして結果は・・・、【完敗】。いや、【惨敗】。 家に届く封筒は明らかに薄く、中には「今回はご期待に沿うことができません」と いう簡単な文字で書かれた紙が1枚だけはいっていた。 だが同時に申し込んでいた「UCカード」の「キャッシングのリボ払い」枠の審査 がなぜか(?)通り、新しく『10万円』のキャッシング枠が付いた。 でも、私にとって「10万円」は大金ではなく、次の日には返済で全てなくなった。 もう【信販系】はだめなのかな・・・。 お金は貸してくれないのかな・・・。 やばいよな。 今月はなんとか「10万円」を借りることができたけど、来月はどうしよう? どうしよう・・・。 「また別のところで新規のカードを作ればなんとかなる?  まだ消費者金融はたくさんあるよね。大丈夫。きっと大丈夫・・・」 楽観的な考えだが、「DCカード」が無くなったことはかなりの重荷だということ にまだ気づいていなかった。 4年前の1997年7月では【45万円】の借金だったのが、わずか4年間で8倍 にまで膨らんでしまった。 もう戻れない。 まったく見えていなかった【最悪のゴール】が、少しずつ近づいてきたようだ。 <2001年8月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:370万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:252,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第53回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年9月> ついに携帯電話を解約することにした。 理由は簡単で、電話代が払えないから・・・。 もちろん会社からは「連絡がとれなくなる」と不満を言われたが、私にとっては それどころではない。 電話代の1万円があれば、20日分の食費になるのだから。 だが、携帯電話を解約したことで予想外の反応が出た。 それは、『督促の電話が全て会社にかかってくるようになった』こと。 今まではほとんどの場合携帯にかかってきていたのだが、解約してからはほぼ 全てが会社にかかってきた。 (おそらく1度は家に電話をしていると思う) 月に何度も督促の電話がかかってきたら会社の上司も怪しむ。 最初の内はなんとかごまかしてきたのだが、最近は開き直って、 私:「わかりました。今月中にはお支払いします」 と、会社にかかってきた督促の電話に普通に答えるようになった。 精神状態が少しおかしくなってきていたのかもしれない。 「最悪の場合、会社を辞めればいいんだから・・・」 今月、ついに「モビット」からの借入がストップした。 これで「アイフル」「オリックス」「DCカード」に続いて4社目・・・。 もう反論の余地もない。 ふと、癌(ガン)の末期症状と似ている、と感じた。 今まで順調に動いていた体の臓器が、ひとつふたつと活動を停止していく。 そして、最後に心臓が止まったとき、人は死ぬ。 わたしの場合、「アイフル」「オリックス」「DCカード」「モビット」の活動 が終わりを告げた。 「まだ生きている」 「まだ大丈夫だ・・・」 でも、借りている9社の内4社が新たな貸し付けを停止したということは・・・。 給料で払えない分は全て借りなければならないのに、どこも貸してくれなくなった ら・・・、どうなる?  <生きていくために必要な『血』がなければ人は死ぬ>  <生きていくために必要な『金』がなければ人は死ぬ> おれも死ぬのか? 死にたくない・・・。 「キャスコ」からはまだ10万円ほど借りることができたので、それで今月はなん とか返済することができた。 だが、これで「キャスコ」も限度額いっぱい借りてしまった・・・。 最近は、今月の返済が終る頃に次の返済のことを考えないといけない。 毎日、毎日考えることは返済のことばかり。 仕事に全く集中できない。 冬のボーナスまで、あと3ヶ月。 なんとかがんばるしかない・・・。 だが、9月のある日、「UCカード」が利用不可能になっていることに気がついた。 これで「信販系」は全て終了。 9社の内、5社が活動(新たな貸し出し)を停止した。 私の余命も長くない。 <2001年9月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:382万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:264,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第54回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年10月> 給料日、いつもよりも少し早めに仕事を切り上げ、返済へと走りまわる。 お決まりのパターンなので、少しも躊躇することなくATMにお金を入れていく。 以前よりも違うのは、財布の中のお金が少ないこと。 給料日なのに全部返済できないこともあるのだから情けない・・・。 今月は消費者金融7社分を返済し終わると、財布の中に2万円残っていた。 「よし。韓国マッサージにでも行って、疲れをとろう」 近くのよく行く韓国マッサージに行く。 金額は1時間で16,000円。 「そんなお金があったら返済にまわせばいいのに・・・」 心の中では思うのだが、体は既に店の中に入っていた。 1時間後、マッサージが終わり店の外に出ると、変なおじさんが2人近づいてきた。 「客の呼びこみ?」と直感で感じた。 だが、その内の1人が意外な質問をしてきた。 男:「今、そこの韓国マッサージに行ってました?」 私:「(不審がって)はい、そうですが、なにか?」  男はポケットに手を入れ、 男:「私、こういうものですが」  と、『警察手帳』を出してきた。 (ああああああああああああああ!!) 一瞬、頭の中が錯乱する。 「韓国マッサージ」でふしだらなことをして・・・、まじで、まじで。 逮捕されるの? まじで? 警察:「もしよろしければお話を伺えますか?」 私 :「(かなり動揺して)は、はい。いいですよ」 警察:「では、車がありますので署のほうでよろしいですか?」 私 :「えっ!警察に行くんですか?」 警察:「大丈夫ですから」 私 :「逮捕ですか?」 警察:「(微笑ながら)いや〜、そんなんじゃないですよ。少しお話を伺うだけです     から」 私 :「そうですか・・・。分かりました」 警察:「じゃあ、行きましょうか。では、現在の時刻が8時12分」 (ちょっと、なに?なんで今、時間を確認したの?それって、テレビで見たことある  けど、逮捕の時によくやるやつじゃん!!) 私は車に乗せられ、警察署へと連れていかれた。 車の中では、親になんて言おう、会社はクビかな、などと不安な考えが頭の中を巡る。 人生初めての警察署は区役所のような雰囲気だった。 違うのは、酔っ払いがイスで寝ていたことぐらいか。 『取調室』に連れていかれるのかと思いきや、連れていかれたのは普通の部屋で、なぜ 私がここに連れてこられたのかを教えてもらった。 警察:「あのですね、あなたが行かれたあの韓国マッサージなんだけど、あそこ無許可     なんですよ」 私 :「本当ですか?それって、行った本人も罪になります?」 警察:「罪にはなりませんよ。だって、外から見ただけだとわかりませんから」 私 :「そうですか、ほっとしました」 警察:「ですから、今回来ていただいたのは、参考でお話を伺いたいんですよ。お時間     はありますか?」 私 :「大丈夫です」 それから約2時間、店内で何が行われたかを聞かれた。 警察:「じゃあ、服は自ら脱いだんですか?」 私 :「はい。女の子が言う前に私のほうから脱ぎました」 警察:「その服は‘かご’に入れたんですか?」 私 :「はい。かごに入れました」 警察:「ローションはどこにありました?」 私 :「おそらく、部屋の中の棚にあったと思うんですが・・・。すいません、よく覚     えてません」 警察:「では、女の子への【お触り】はなかったんですか?」 私 :「はい。女の子が私の足のほうに坐ったので、【お触り】はしませんでした」 警察:「でも、店内には【お触りOK】と書いてたんですよね?」 私 :「書いてたんですが、私のほうが面倒くさくなって・・・」 と、こんな感じで調書を書いた。 調書は本当に細かく、部屋の中の間取りや女性の顔・形なども聞かれた。 最後に謝礼として少しお金をもらって、警察署を出た。 本当に情けない・・・。 おれはいったい何をやっているんだ。 借金までして、警察には事情聴取されるし・・・。 親が知ったら泣くな。 ああ・・・。 結局、今月も家賃が払えなかった・・・。 どうなるんだろう? おれはどうなるんだろう? 会社にいるのが怖い。 会社の電話が鳴るたびにビクビクする。 督促の電話じゃないかと・・・。 もはや休みの日にパチスロをするお金もない。 食費もない。 お金がない。 本当に1日1日生きていくのがギリギリです。 <2001年10月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:384万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:264,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第55回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年11月> お金がない。 全くお金がない。 返済できない・・・。 どうしよう? どうすればいいんだ? こんなことを毎日考えている。 楽しくない毎日。 苦しい毎日。 今月は完全にお金がない。 給料日を迎え、給料を全部返済にまわしても足りない。 アパートの管理会社からまた督促状が届いた。 『11月15日までにお家賃を振込んでいただけない場合、鍵を取り返させて  いただきます』 どうしようもなかった。 仕事帰りに実家の親に電話する。 私:「もしもし、おれ」 母:「仕事終わったの?」 私:「うん、今帰るとこ」 母:「きちんとご飯食べてる?コンビニ弁当ばっかりじゃないの?」 私:「大丈夫」 母:「うん、ならよかった。お母さんなにか食べ物送ろうか?」 私:「いいよ、こっちで買えるから」 母:「そう・・・」 私:「それでさ、お願いがあるんだけど」 母:「なに?」 私:「今年さ、不景気じゃん。うちの会社も冬のボーナスが出ない感じなんだよ    ね。それで、前にローン組んでて、冬のボーナス分がこのままだと払えな    くて・・・」 母:「なに買ったの?」 私:「テレビ」 母:「いくらの?」 私:「15万円」 母:「そんな高いテレビ買わなくても。それで、いくら必要なの?」 私:「5万円あれば大丈夫」 母:「じゃあ、明日振り込むからきちんと払って」 私:「そんなに急がなくてもいいよ。支払いはまだ先だから」 母:「はい、はい。でも、お金が無いからといって借金だけは絶対しちゃだめだ    よ」 私:「分かってるって」 全てが嘘だった。 母親に話した内容全てが嘘だった。 ・冬のボーナスがでないこと ・ローンで15万円のテレビを買ったこと ・借金してないこと 次の日、5万円ではなく10万円が振り込まれていた。 そのお金で家賃を払い、残ったお金はいつものようにパチスロへと消えていった。 無意識のうちにパチンコ屋へと向かってしまう。 パチスロをしているときも全く楽しくは無い。 どちらかといえば胃が痛い。 じゃあ、なんのためにパチスロをしているのだろう? 正直、自分でもわからない。 【ギャンブル中毒・末期症状】 この言葉ひとつで説明できるのが情けない・・・。 ひどい罪悪感がおれを襲っている。 借金をしたことよりも【母親に嘘をついたこと】で。 ひどくいらいらする。 『なにもかも捨てて逃げたい!!』 でも、そうすると親に迷惑がかかる・・・。 結局、【意気地】がないだけかもしれない。 【根性】があればもっといい選択肢に出会えたかもしれない。 もっと【努力】していれば・・・。 どんなに過去のことを考えても、「400万円の借金」という現実は変わらない。 12月、冬のボーナスがでる。 まさしく人生最後の【蜘蛛の糸】だった。 最後の救いの神:【30万円】をどう使うか。 しかし、選択肢は1つしかなかった・・・。 <2001年11月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:386万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:264,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第56回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2001年12月> 2001年12月20日。 冬のボーナスがわが社でも支給された。 金額は『30万円』。 どうやって使おう? とりあえず借金の返済に充てるのだが、12月分の返済分だけで『27万円弱』 かかる。 1、武富士・・・・30,000円 2、アコム・・・・25,000円 3、アイフル・・・24,000円 4、オリックス・・20,000円 5、モビット・・・10,000円 6、プリーバ・・・15,000円 7、キャスコ・・・20,000円 8、UCカード・・70,000円 ※キャッシング、ローン含む 9、DCカード・・50,000円       合計:264,000円 これでボーナスのほとんどはなくなる。 そうすると、12月分の給料(20万円)は丸々使えるわけだが・・・。 だが、よく考えると11月に払った家賃は10月分の延滞していた分なので、 正確には11月と12月の2ヶ月分の家賃を払わないといけない。 これで11万円が消える。 残りは『9万円』・・・。 「ボーナスをもらってもこんなに厳しいの?」 これが正直な感想だった。 できれば、夏・冬のボーナスで1社ずつ完済できれば、などと淡い夢を抱いて いたのだが、目の前にある数字は想像以上の金額だった。 「とりあえず9万円あれば正月を越せるか・・・」 1日1日生活するので精一杯だった。 会社の同僚から、スキーに誘われたがもちろん行けない。 「広島の実家に帰るから」と、嘘をつく。 親にも「正月は仕事があるから、今年も帰れない」とまた嘘をつく。 「本当に嘘が多くなった・・・」 今月は返済をきちんとしたためか、会社に督促の電話もなく、とても平穏に年末 を迎える。 実家から餅やレトルト食品がダンボール1箱分送られてきた。 「ありがたい・・・。本当にありがたい・・・」 1月1日、近くの神社に行っておみくじをひく。 結果は【大吉】。 【あなたの今年の運勢は上向きです。自分を信じて行動することが大事】 いったいなにが【大吉】なんだ? おそらく死刑判決を受けた犯罪者でも、おみくじを引けば【大吉】が出るんだろ うな。 根本的に終わった人間は、おみくじを引いても意味がないことを知った。 「くそっ!」 世間の幸せそうな人たちを見るのが辛い。 おれはもう自然に笑うことができないのだろうか・・・。 「ドラゴンクエスト3」を中古で買ってきて、大学時代のように徹夜でゲームを やってみた。 昼に起きているとパチンコ屋に行ってしまうので、あえて昼と夜を逆転した生活 にしてみる。 が、無駄だった。 徹夜でもパチンコ屋には行けるのだ。 もはや病気は自分ではどうしようもできないところまで悪化している。 正月休みが終わった段階で所持金は0円に近かった。 2001年。 この年はおれにとっていったいどんな意味があったのだろうか? ただ借金を増やしていただけのように思える。 そして、2002年。 ある意味【人生最後の年】を迎える・・・。 正直、2001年で終わっていたのかもしれない・・・。 ☆最終回まであと『5回』。 <2001年12月現在>  ・借入先:9件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ)  ・借入金:388万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:264,000円 ======================================================================= ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第57回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年1月> 正月休みが終わって会社に行くと、しばらくの間は膨大な仕事に追われて借金の ことを忘れることができた。 が、財布の中にお金がない事実は変わらない。 どうにかしなければいけない。 「は〜、また借金か・・・。次はどこにしよう・・・」 「キャスコ」の契約時(第50号参照)にひどく恥をかいたので、できれば無人 契約機で借りられるところがいい。 その当時、とても私の興味を引いていたのが「レイク」。 名前もよく聞いていたし、最近ではテレビCMも見る。 「ここしかない!!」 ここで何かの雑誌で読んだ情報を思い出した。 【無人契約機では、通常の対面式の審査よりも厳密に調べられることがあります。  無人とはいえヒゲも剃らずにTシャツで行くようなことはやめてください。  むしろ、これから彼女と会うような気構えで行くのがベストです】 「よし!!  じゃあ、おれの場合はこんなシチュエーションで行こう!」  『仕事中に急に今日が彼女の誕生日だと気づいた。でも、財布にはお金がない。   う〜ん、困った。そんな時、偶然目の前に「レイク」の看板が目に入った。   彼女のためだ、仕方がない!』 と、こんな感じで無人契約機の中に入って行った・・・。 あまり慣れた感じを出すと怪しまれるので、あえて‘キョロキョロ’する。 女の声:「こんにちは、どうぞおかけください」と、声だけが聞こえてきた。  私 :「あっ、はい」 女の声:「では、机の上にある申し込み用紙に記入をお願いします」  私 :「分かりました」 申し込み用紙に名前・住所などを書いていくと、いつもの難所がやってきた。 【あなたの現在の借入先と借入金額】 しかも、また「5ヶ所」までしか書けない。 「9社」から借りている俺はどうすればいいんだ? まあ、いいか。5ヶ所しか書くところがないんだから、借入金額が多い順に 5ヶ所書いてやれ。 全て記入し終わり、健康保険書のコピーと申込書を指定の位置にセットした。 女の声:「では、審査いたしますのでしばらくお待ちください」 狭い部屋の中には無駄なものが一切置かれていない。 唯一置かれているのは、時間つぶしのための雑誌。 それも「ROLEX大百科」とか「上手なリフォーム術」、「日経マネー」などの 絶対読まないような雑誌。 それでも敢えて「日経マネー」を呼んでレンズの向こうの相手にアピールする。 「おれは本当は経済に興味がある男なんだ!借金が多いのは魔が差しただけだ!」 おそらく全く無駄な努力なんだが・・・。 3度目の「上手なリフォーム術」を読み終えた時、今度は生の女性の声が聞こえて きた。 女の声:「本日はありがとうございます。2・3質問してもよろしいでしょうか?」  私 :「(きた、きた!!)はい」 女の声:「まずは本日のお借入の目的なんですが、【その他】にチェックされてい      るんですけれでも、具体的に教えてもらってもいいですか?」  私 :「はい。今日が彼女の誕生日ってことをすっかり忘れてたんですよ。      それで、プレゼントを買うお金に困ってしまって」 女の声:「(冷めた感じで)分かりました」  私 :「(嘘ってばれた?)」 女の声:「それと、申込書に書かれてある借入先で全部ですか?」  私 :「いや、もう少しあります」 女の声:「他は、どこから、いくら借りてますか?」  私 :「え〜とですね、プリーバから30万円です」 女の声:「あとはありませんか?」  私 :「(借入金額が50万円のモビットのことは隠そう。)ありません!」 女の声:「おかしいですね。こちらのデータだともう1件あるんですが、お記憶にあ      りませんか?」  私 :「(やばい、ばれてる!)あっ、思い出しました。モビットから借りてます。      でも、あれって信販系じゃないですか?」 女の声:「関係ないですよ。借りたところがあれば全部話してください」  私 :「すいません・・・」 女の声:「ではもうしばらくお待ちください」 「あ〜、これでだめだな・・・」 それから10分後。 女の声:「お待たせしました。ただいま審査をしたところ、ご希望限度額の50万円      はちょっと厳しいんですが、20万円までなら可能ですが?」  私 :「あっ、ありがとうございます!」 女の声:「では、今からカードを発行しますのでもうしばらくお待ちください」 「やった!!!!」と、叫びたいところだが、無人契約機を出るまではどこから見ら れているか分からない。 平静を装う。 カードをもらってからの行動は早かった。 即座に隣のATMに行き、5万円を引き落とす。 そして、近くのラーメン屋で味噌ラーメンを食べ、時間はまだ夜の7時。 「よし、ひと勝負!!」 その3時間後。 5万円なんてあっという間になくなる。 「まだまだ!!  あと15万円借りられる!!」 だが、もう目の前には1月の返済タイムが迫ってきている。 毎月の返済金額が30万円近いのだから、給料だけでは足りないのは明らかで、毎月 10万円はどこから工面しないといけない。 1月の返済を終えた時には、1月分の給料と「レイク」の限度額がなくなっていた。 来月もどこからか借りないと・・・。 ☆最終回まであと『4回』。 <2002年1月現在>  ・借入先:10件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク)  ・借入金:408万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:284,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第58回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年2月> は〜。 毎日胃が痛い・・・。 どうしよう? また今月の返済がやってくる。 もちろん財布の中にはお金がないし、通帳の中にもない。 家の中にもないし、会社の机の中にもない。 全くお金がない・・・。 とりあえず25日の給料日を迎えて返済に回ってみるが、やはり足りない。 家賃なんかは最初から計算にいれていなくても、それでも10万円は足りない。 これもアイフルやオリックスの「貸出停止」が大きい。 「全ての消費者金融が貸出を停止したらどうなるんだろう・・・」 考えるだけで恐ろしくなる。 そうなった時はそうなった時に考える。 まずは目の前の「10万円」の工面が急務だ。 といっても、もはや【借金】しか手段はない。 それも新規で借りないと、他からは1円も借りることはできないのだから情けない。 おそらく初めて何も計画を立てずに消費者金融に入っていったと思う。 その会社は『三和ファイナンス』。 女の社員:「(明るく)こんにちは!!」   私  :「どうも・・・」 女の社員:「はじめてですか?」   私  :「はい、はじめてです」 女の社員:「ありがとうございます。それで今日はどんなご用でしょうか?」   私  :「(ここに来るのに借金以外ないだろう!)え〜とですね、少しお金を       借りたいんですが」 女の社員:「では、こちらにご記入していただけますか」 いつもの見慣れた申込用紙に、備えつけのペンですらすら書いていく。 女の社員:「今日はなにか本人を証明できるものはお持ちですか?」   私  :「保険証は持ってますけど」 女の社員:「ありがとうございます。印鑑はお持ちですか?」   私  :「持ってます」 女の社員:「では審査が通りましたら、本日からご利用が可能ですね」   私  :「(通ればね・・・)」 申込用紙に全てを書き終えると、女の社員がそれを持って裏の部屋へと消えていき、 30分近く経過した。 対面でこんなに時間がかかるのも久しぶりだ。 女の社員:「すいません、松下様。ご自宅には誰もいませんか?」   私  :「1人暮らしなんで、誰もいないですけど」 女の社員:「そうですか・・・。それでは、ご実家の方に確認の電話をしてもよろ       しいですか?」   私  :「あまりよろしくはないですけど・・・。しないとまずいんですよね?」 女の社員:「そうですね。もちろん、私の身分は変えますので」   私  :「分かりました・・・。バレないようにお願いします・・・」 そして、広島の実家に「大学時代の友人」という形で電話がいった。 そのお陰で『限度額:10万円』のカードを手に入れることができた。 (本当は『限度額:50万円』で申し込んだのに・・・) 消費者金融を出てから、限度額いっぱいで10万円を借りてキャスコ、レイク、UC カードの返済にあてた。 その夜、実家の母親から電話があった。 母:「今日、大学時代の友達っていう人から電話があったけど」 私:「なんて言ってた?」 母:「連絡がつかなくなってたんで、電話番号を教えて欲しいって」 私:「そう・・・。誰だろう?」 母:「山本さんっていう女の人だったよ」 私:「ああ、山本さんね」 母:「友達かい?」 私:「うん、友達・・・」 まさか「消費者金融の人」とは言えない。 あ・・・・。 また今月も新規でカードを作ってしまった・・・。 来月も作らないといけないだろうな〜。 家賃も払ってないし、生活費も全くない・・・。 ああ・・・・。 とりあえず、もう1枚カードを作ろう!! そうしないと明日から生活できない!! よし、明日作ろう!! が、事態は急変する。 2002年3月1日、全ての消費者金融が貸出を停止した。 ☆最終回まであと『3回』。 <2002年2月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                  第59回 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年3月> 2002年3月1日。 「もしかしたら、増額が可能になってないかな?」と淡い期待を持ちながら、 いつものように武富士のATMに行く。 カードを入れて暗証番号を押すと、予想外の文字がでてきた。  【貸出可能残高=0円】 「あれっ、なんで?たしか1,000円はまだ借りれるはずなのに?」 すぐに【借入残高】を確認してみる。 たしかに【796,258円】で、まだ3,000円は借りられる。 「もしかして・・・。やばい、武富士も止められた・・・」 アイフル、モビット、オリックス、UCカード、DCカードに続いて6社目の 「貸出停止」。 「まさか、ほかの消費者金融も止められてる?」 すぐに同じビルの中にあるアコムにも行ってみる。 「最悪・・・。アコムもだめだ・・・」 アコムも貸出が止められていた。 急に胃が痛くなる。 うっ、あ・・・・。 やばい、やばい、やばい、やばい。 どうしよう・・・。 あと残るはプリーバ、キャスコ、レイク、三和キャッシングの4社。 (「三和キャッシング」は先月限度額いっぱい借りているので、借りることは  できない) とりあえず全ての支店に行って、ATMで確認してみた。 全ての消費者金融の貸出が停止していた。 「終わった・・・」 汗が体中から噴出してくる。 でも、この瞬間「これで借金ができなくなるんだ。よかった・・・」とも思った。 もう自分では止められない。 誰かに止めて欲しかった。 きっかけが欲しかった。 「これでなにもかも終わりだ・・・」 頭が錯乱しているのか、今日が何曜日かも思い出すことができないくらい動揺し、 食欲も全く沸いてこない。 家に帰って風呂に入ってはじめて、自分が置かれている立場が「人間として最悪 の状態」であることに気がついた。 「まさか自分が借金で悩むなんて・・・。親が知ったら泣くな・・・」 湯船につかっていても、髪を洗う気力さえない。 不安でどうしようもない。 明日からどうしよう? 今月の返済はどうすればいいんだっけ? いくら足りないんだ? 「とりあえず、借金の総額をまとめてみないと・・・」 風呂から出て体もきちんと拭かずに、パソコンのエクセルで表を作り始めた。 表の題は【借金返済計画】とした。 ひとつひとつ現在の借り入れ金額と毎月の返済額をエクセルにいれていく。 「・・・(絶句)」 ここではじめて借金が400万円を超えていたことに気がつく。 恐ろしさで指先が震え始める。 ふと中学時代・高校時代の自分を思い出す。 「どこで間違ったんだ?おれはもっと優等生じゃなかったのか?」 毎月の返済金額が「30万円」近いってことは、給料だけでは返せない。 今月の返済も全然足りない。 家賃も払わないと。 あああああああああああああああああ。 あああああああああああああああああ。 あああああああああああああああああ。 なにか方法はないんか? まだ助かる手段は・・・。 インターネットで調べてみると「おまとめローン」という言葉を見つける。 『複数の借り入れをひとつにまとめてみませんか?』 これだ!! 内容をよく読んでいく。 が、『300万円以上は保証人が1人必要です』という言葉であきらめる。 「だれに保証人になってもらえばいいの?そんなの誰にも頼めないよ」 さらにインターネットで調べていくと「保証人紹介します」の文字。 いいじゃん、これ!! しかし、最後に一言、『借金の保証人はお引き受けできせん』。 「そんなに甘くないか・・・」 とりあえず、今月の返済期日がくるまでに『最低10万円』は工面しないと 延滞になるし、その延滞分もいつ払えるか分からない。 「借金しかないか・・・。また新規でカードを作ろう・・・。  でも、契約できるのかな?」 そして、給料日の3月25日。 給料を全て返済に回して、少しでも借り入れ残高を減らしてから新規のカード を作りにいく。 1件目は「プロミス」。 2件目は「アエル」。 3件目は「ニコニコクレジット」。 全て契約を断られた。 しかも最後の「ニコニコクレジット」に関しては、審査の時間が10分もかか らずに「今回はお見送りします」とのこと。 おそらく、おれのデータは最悪なんだろう。 もはや、「会社に何年勤務している」とか、「今のアパートに何年住んでいる」 とか、そんな次元の問題ではなくなっている。  『松下一樹にはもう1円もお金は貸せない』ということだろう。 「どうしよう・・・。10万円なんとかしないと・・・」 翌日、会社に行く途中、電信柱にチラシが貼ってあった。 『ブラックの方歓迎!!30万円まで即融資!! 電話番号:090-・・・』 すぐ携帯から電話してみる。 「もしもし、チラシを見たんですけど・・・」 ☆最終回まであと『2回』。 <2002年3月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 第60回・前編 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年4月> 『ブラックの方歓迎!!30万円まで即融資!! 電話番号:090-・・・』 電信柱に貼ってあるチラシを見て、すぐに携帯から電話をしてみる。 私:「もしもし、チラシを見たんですけど・・・」 男:「(面倒くさそうに)初めて?」 私:「はい、はじめてです」 男:「今ね、ちょっと忙しいから、あとで、また電話してくれる?」 私:「分かりました。何分後くらいがよろしいですか?」 男:「じゃあ、1時間後」 【1時間後】 私:「さっき電話したものですが」 男:「えっ?あ〜、さっきの人ね。なんの用でしたっけ?」 私:「チラシを見て電話したんですが、ちょっとお金を貸していただきたいと    思いまして・・・」 男:「いくらぐらい?」 私:「20万円くらいです」 男:「あっ、そう。え〜とね、他からいくら借りてます?」 私:「(ここは正直に言おう)全部で400万円くらいです」 男:「400万!いったい何件から借りてんの?」 私:「10件くらいです」 男:「それじゃあ、ちょっと厳しいな〜」 私:「金額が問題ですか?」 男:「金額じゃなくて、借入件数が多過ぎるんだよ。それだと、普通のところ    はもう貸してくれないんじゃない?」 私:「それで、ここに電話してきたんですけど・・・」 男:「ここも同じだって。だって、あんたもよく考えてみてよ。そんなに借金    まみれの人にお金貸せる?1万円だって貸せないよ」 私:「自分、真面目に働いてますし、返済もきちんとしますので・・・」 男:「あんたね、きちんと働いている人が400万円も借金する?」 私:「・・・」 男:「まあ、他もだめだと思うけど」 私:「なんともならないですか?」 男:「あきらめたほうがいいね」 情けない。 こんな闇金融の男におれは何をお願いしているんだ。 それに、なんて情けない声をだしているんだ・・・。 いや、でもお金を用意しないことには大変なことになる。 夏のボーナスまでもてばなんとかなるし、ここが正念場・・・。 コンビニに行って、パチンコ雑誌の中にある金融の広告を探す。 あった!! 『1,000万円まで貸します!!審査なし。金利:1%。すぐに振込可。』 ここしかない!! 携帯に電話番号を記憶させてコンビニから出る。 もう仕事どころではない。 すぐに携帯から電話をする。 男 :「(とても明るく)はい、○○キャッシングでございます」 私 :「すいません、雑誌を見て電話したんですが・・・」 男 :「ありがとうございます。本日電話をされるのは初めてですか?」 私 :「はい、初めてです」 男 :「そうですか。私、山本と申しますが、本日はどのようなご用件で?」 私 :「お金をちょっと借りたいと思いまして・・・」 山本:「ありがとうございます。では、2・3質問してもよろしいですか?」 私 :「はい」 それから、住所、勤務先、借入金額、借入件数などを聞かれ、全て正直に答えた。 もう精神的にまいっている。 きつい・・・。 山本:「他の金融会社にも電話されました?」 私 :「ここに電話する前に1件だけしました」 山本:「そこはなんて言ってました?」 私 :「件数が多過ぎるんで貸せない、って・・・」 山本:「それはひどいですね。うちはそういうことはありませんので安心して     ください」 私 :「ありがとうございます」 山本:「では、これから上の者と相談しますので、また明日電話していただけますか?」 私 :「でも、広告に『審査なし』って書いてあったんですが?」 山本:「審査ではなくて、今金庫にお金がないものですから、どっちにしてもお金を     用意できるのは明日になるんですよ」 私 :「そうですか・・・。分かりました。じゃあ、明日また電話します」 山本:「では、お待ちしております」 私 :「本当によろしくお願いします」 よかった〜!! なんとかお金を借りれそうだ・・・。 安心した〜。 20万円借りれれば、先月分と家賃は全部返せるな。 よし、よし!! 助かった・・・。 【次の日】  私 :「山本さんいらっしゃいますか?」 別の男:「すいません、山本は外出していますが」  私 :「えっ?何時くらいに戻られますか?」 別の男:「ちょっと時間までは分かりかねますが」  私 :「山本さんに今日電話することになっていたんですが・・・。      私、松下というものなんですけども、他の人だとわかりませんか?」 別の男:「すいません、担当のものでないと・・・」  私 :「分かりました・・・。山本さんは明日はいらっしゃいますか?」 別の男:「明日は朝から出社してます」  私 :「分かりました・・・」 あれっ? なんで山本さんいないの? 約束したことを忘れたのかな? 急な仕事かな? 明日朝一番で電話してみよう。 【また次の日・朝】 私 :「山本さんいらっしゃいますか」 山本:「山本です。昨日はすいませんでした」 私 :「いや、いいです。それで、お金は貸してもらえるんでしょうか?」 山本:「それがですね、何点か引っかかることがあって上の者からNGがでたんですよ」 私 :「・・・・・・。もうここしかないんですよ。お願いします」 山本:「ここに電話してから、他の金融会社には電話されてませんか?」 私 :「してないですよ!私は山本さんを信頼してますから!」 山本:「分かりました。(小声で)会社はNG出しましたけど、私の知り合いにも同じ     業種の人間がいるんで、そっちにお願いしてみます。会社が違えば審査基準も     違いますから」 私 :「本当にお世話をかけます。すいません・・・」 山本:「いえいえ、大丈夫ですよ。では、また明日電話してもらえます?私の携帯番号を     教えるので、携帯の方に。私も会社にバレるとやばいんで」 私 :「分かりました。山本さんの方は大丈夫ですか?会社にバレたら・・・」 山本:「大丈夫ですから、心配しないでください。では、また明日」 私 :「本当に色々とすいません。よろしくお願いします」 はぁ・・・。 山本さんならなんとかしてくれるだろう。 はぁ・・・。 はぁ・・・。 胃が痛いなぁ・・・。 会社にも督促の電話がかかってきてるし、家賃も払わないと・・・。 アパートを追い出されることになる。 ☆【第60回・後編】に続く。 <2002年4月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 第60回・後編 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年4月> 【さらに次の日】 私 :「もしもし、松下ですが・・・」 山本:「おはようございます、松下さん」 私 :「あっ、おはようございます。それで、友人の方はいかがですか?     お金を貸していただけそうでしょうか・・・」 山本:「そうですね〜、知り合いの何人かに聞いてみたんですが、やはり借入     件数の多さがひっかかるということだったんですよ」 私 :「はぁ・・・」 山本:「なんとか金額の少ないところを1・2社完済できないですか?」 私 :「無理です。今、1万円もないですから」 山本:「ご両親から借りたりしてでも無理ですか?」 私 :「親には知られたくないんです・・・」 山本:「そうですか・・・」 私 :「・・・」 山本:「私ももう少し考えますので、松下さんもなんとかお金を作れないか     動いてもらえます?」 私 :「はい、がんばってみます・・・」 山本:「では、また明日電話をください」 もうだめなのかな・・・。 お金を工面しろって言ったって、もうどこも貸してくれないし、友達には絶対 頼めない・・・。 山本さんに頼るしかない・・・。 【また次の日】 私 :「松下です・・・」 山本:「こんにちは!ちょっとお聞きしますが、今、ローンを組んだりしてま     すか?」 私 :「いえ、ローンはないですけど」 山本:「そうですか・・・。今日は何時に仕事終わります?」 私 :「(なんか策があるのかな?)夜の6時には終わります!」 山本:「では、後で指定するところに行って商品をローンで買っていただきた     いんですよ」 私 :「はい」 山本:「それをですね、私の知り合いが高く買い取りますので、そのお金で     どこか完済してもらえれば、再度うちの会社で審査いれます。     今度は1社完済したという実績がありますので、まず間違い無く     お貸しすることができると思うんですよね」 私 :「分かりました!それでお願いします」 山本:「では、△△電機の○○支店ってご存知ですか?」 私 :「はい、知ってます」 山本:「では、そこに着いたらまた電話もらえます?」 私 :「分かりました。夕方の7時には着くようにします」 山本:「それと、これは私が言ったってことは秘密にしてほしいんですよ」 私 :「もちろん秘密にします!」 よし、きた!! さすが山本さん!! これでお金を作って「三和キャッシング(借入金額:10万円)」を完済すれ ばいいな。 先が見えた!! なんとかなりそう♪ でも、おれ、VISAもマスターも【利用停止】をくらっているんだけど、 大丈夫かな。 まあ、今更言ってもしょうがない・・・。 よし、6時までには仕事を終えないと!! 【夕方6時30分】 私 :「もしもし、松下です」 山本:「もう着いたんですか?早いですね」 私 :「急いでタクシーで来たので。それで、この次はどうすればいいんです     か?」 山本:「じゃあですね、○○製の××というパソコンをローンで買ってください。     金額はおそらく20万円程度だと思うので、できれば店員と値段交渉を     してもらえますか。会社で急にパソコンが必要になった、とかうまい理由     を言うとさらにいいです」 私 :「分かりました」 山本:「ここからが大事なんですが、支払いは?と聞かれたら、ローンでお願い     します、と答えてください。そして、ここのカードを作りたいので申込み     もお願いします、と言ってもらえます。そうすると、信販ローンの申込み     用紙を渡されるので、それに記入してください」 私 :「はい」 山本:「それで、『希望キャッシング枠』の項目には何も書かないでください。     あと、『他からの借入金額』のところもなにも書かないで下さい」 私 :「店員に書いて、と言われたら?」 山本:「そのときは、『0』と書いてください」 私 :「分かりました」 山本:「これで大丈夫だと思うので、パソコンを手に入れて店を出たらまた電話し     てもらえます?」 私 :「はい・・・」 山本:「がんばってください!!」 私 :「がんばります・・・」 【それから1時間後】 私 :「もしもし・・・」 山本:「どうでした?」 私 :「だめでした」 山本:「(急に声色が変わって)なんで?店員に理由聞いた?」 私 :「いえ・・・。なんか、審査が通らなかったって」 山本:「いや、そんなことはありえない!あんた、なんかした?」 私 :「あの〜、前にUCカードとDCカードで【カード使用停止】を食らってる     んですよ。もしかしたら、それが原因かと・・・」 山本:「あんた、そんなこと一言もおれに言ってないよね?」 私 :「すいません・・・。本当にすいません・・・」 山本:「・・・」 私 :「すいません・・・」 山本:「あんた、もうあきらめたほうがいいよ。おれはもうやることはやったから」 私 :「山本さん、すいません!なんとか、他に助かる道はありませんか?お願い     します!」 山本:「・・・、無理だね。こっちは一生懸命やっているのに、嘘までつかれたん     だから。あんた、おれが言うのもなんだけど【人間のクズ】だね!」 私 :「すいません・・・。なんとか、なんとかなりませんか?今週中にお金を用意     しないとやばいんです・・・」 山本:「おれの知ったことじゃないって!」 電話は切れた。 どうしよう・・・。 「どこからかお金を借りれないか?」 「何か売るものはないか?」 「親に電話して少しお金を送ってもらおうか?」 どれも根本的な解決にならない。 とりあえず今週中に20万円を用意しなければ大変なことになる。 想像もしたくない。 会社への督促の電話も毎日かかるようになってきてるし・・・。 でも、今月をなんとか回避できでも、来月にはまた15万円近く足りなくなる。 再来月もまた15万円を工面しないといけない。 夏のボーナスまで、あと3ヶ月。 無理だ・・・。  【ゲームオーバー】 残された道は「自己破産」・・・。 それだけは絶対避けたい! でも、親には「借金が400万円ある」なんて絶対に言えない・・・。 死んでも言えない・・・。 たぶん、母親は泣くだろう。 父親はがっかりして、おれを殴る。 殴られることはそんなに問題ではなく、重要なのは、 【自分に対する両親の期待をこっぱみじんに粉砕すること】 それも自らの手で・・・。 アパートに帰るが、食欲は全然なく、鏡で見た自分の顔はひどくやつれた病人 のようだった。 布団に入っても体が震えてくる。 不安で、不安で・・・。 「朝起きたらこれが全て夢だったらいいのに」と思うが・・・。 結局、不安で一睡も眠ることができないまま会社に行く。 精神状態は自分でもどうしようもできないくらいおかしくなっていた・・・。 ☆次回、ついに【最終回】!! <2002年4月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 最終回・前編 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年4月> 不安で一睡も眠ることができない。 どうしよう・・・。 お金がない・・・。 なんとかならないかな・・・。 なんとか・・・、なにか売るものはないか・・・。 精神状態は自分でもどうしようもできないくらいおかしくなっている。 しかし、朝が来れば会社に行かないといけない。 仕事をするというよりも、会社への督促電話の対応に行くのだ。 あああ、いったいどうしたらいいんだ・・・。 誰か助けてくれ。。。 会社に行っても仕事をする状態じゃない。 インターネットで、お金を貸してくれそうなところを探している。 そして、昼前。 1本の督促電話がかかってきた。 女:「松下さんですか?」 私:「はい、松下です」 女:「○○ですが、先月の返済期限が過ぎていますがいかがなされました?」 私:「(周りを気にしながら)はい、その件は確認して折り返します」 女:「なにを確認するんですか?支払方法ですか?」 私:「いや、そうじゃなくてですね、1度確認しますので・・・」 女:「なんですか?松下さんですよね?」 私:「(この女、気づけよ!お前がかけてきているのは会社だぞ!会社の電話で    明日には振り込みます、なんて言えるか!)・・・」 女:「もしもし?松下さん?」 私:「ですから、確認しますので」 女:「あの〜、ですから、何を確認するんですか?」 遂にイライラが頂点に達したおれは電話を切ってしまった。 周りの同僚は怪しい目つきでおれを見ている。 こうなってしまったら、なにも言い訳ができない。 おそらく周りの同僚は「おれが借金の督促の電話を受けている」ことは知ってい るはずだ。 そりゃあそうだ。 こんなに毎日、会社名も言わず「苗字」しか言わない人から電話がかかってくる のだから。 「周りの視線」と「今日中に10万円を用意しないといけない脅迫観念」が遂に 精神をおかしくしてしまった。 私 :「すいません、課長。ちょっといいですか?」 課長:「なんだ?」 私 :「すいません、個人的な相談なんですが・・・」 課長:「そうか。じゃあ、昼飯でも行くか」 2人無言のまま、和食屋に入っていく。 課長:「それで、相談ってなんだ?」 私 :「あの〜、借金のことで・・・」 課長:「だれの?」 私 :「自分です」 課長:「薄々気づいていたけど、最近そわそわしていたのはそれが原因か?」 私 :「はい、すいません・・・」 課長:「で、借金はいくらなんだ」 私 :「・・・。400万円です」 課長:「(唖然として)400万円・・・。誰かにだまされたのか?」 私 :「いえ・・・」 課長:「じゃあ、借金の原因はなんだ?400万円って、かなりの金額だぞ」 私 :「ギャンブルです」 課長:「(絶句)・・・。お前な〜、ギャンブルで400万円も借金作ってどう     するんだ!」 私 :「すいません・・・」 課長:「パチンコか?」 私 :「はい。それとスロットです・・・」 課長:「はぁ・・・」 しばしの沈黙。 課長:「毎月の返済金額もかなりあるだろ?」 私 :「・・・。30万円近いです」 課長:「(あきれて)給料よりも多いじゃないか。それで、もうどうしようも     できなくなって相談したのか?」 私 :「はい・・・」 課長:「親には言ったのか?」 私 :「言ってません」 課長:「・・・。闇金融とかには手を出してないだろうな?」 私 :「はい!闇金融からは借りてません!」 課長:「おれの友達にも国立大学を卒業して公務員になった奴がいたけどな、     そいつも借金で首が回らなくなって、役所にもいられなくなってな、     今はタクシーの運転手だ!     なんでいい大学出たのに、そんなことも分からないんだ?」 私 :「すいません・・・。     気がついた時にはもうどうしようもできなくなって・・・」 課長:「いつから借金してたんだ?」 私 :「大学入ってからです」 課長:「大学入って、遊ぶ金欲しさにか?」 私 :「はい・・・」 再び沈黙。 課長:「100万円くらいだったらおれが個人的に貸せるけど、400万円     ともなるとどうしようもできないんで、ちょっとおれに預けろ!     悪いようにはしないから」 私 :「はい、すいません・・・」 課長:「借金のことは他に誰か知ってるか?」 私 :「誰も知りません・・・」 課長:「会社の同僚とか友達から金を借りたりはしてないだろうな?」 私 :「してません!」 課長:「分かった」 借金をして6年。 初めて人に相談した。 でも、それが会社の上司というのは、精神状態が普通だったら絶対ありえない! 借金が原因で会社をクビになるのは全然珍しくないのだから。 会社に戻ってから仕事をするが、当然手につかない。 そして、1時間後。 課長:「おい、松下!ちょっと会議室まで来い!」 ☆【最終回・中編】に続く。 <2002年4月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 最終回・中編 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 課長:「おい、松下!ちょっと会議室まで来い!」 私 :「はい!」 会議室に入っていくと、中には社長がいた。 課長:「松下、とりあえずイスに座れ!」 私 :「はい・・・(足がガクガク震える)」 社長:「松下、どうしたんだ?お前が借金するとは思えんぞ?」 私 :「すいません・・・(涙声)」 課長:「とにかく、なんで借金したかを言ってみろ」 私 :「はい・・・」 それから30分近く、大学時代からどのように借金をしたかを話した。 ただ、自分でも驚くほどアレンジをしていた。 私 :「最初に借金をするきっかけは、友人にいきなり誘われたスキーツアーで、     自分も見栄があったので、お金がないのに申し込んでしまって・・・」 社長:「それで借金をしたのか?」 私 :「はい・・・」 本当は、パチンコ・パチスロで負けて家賃が払えなくなったから。 こんなに窮地に追い込まれているのに、見事な嘘をつくもんだ、と自分でも後で 驚いた。 私 :「実家からの仕送りも少なくて、特に大学のテスト時期になるとバイトも     できなくなって・・・、それで金を借りました」 社長:「生活費か?」 私 :「はい・・・」 これも嘘。 実家からの仕送りは十分ではなかったにしても、奨学金で毎月5万円もらってい たし、バイトも10万円近くは稼いでいた。 仕送りと合わせれば25万円。 いったいなにが少ないのか・・・。 社長:「じゃあ、大学時代に作った借金の返済のために『雪だるま式』に増えたっ     てことか?」 私 :「はい・・・、すいません」 課長:「(無言)・・・」 社長:「とりあえず、いったいどこからいくら借りているか調べてきなさい。     きちんと正確にな!もう隠してもしょうがないだろ」 私 :「はい・・・」 社長:「じゃあ、今日はもう帰りなさい」 課長:「急ぎの仕事はないんだろ?」 私 :「はい、大丈夫です・・・」 社長:「きちんと正確に調べてきなさい!」 私 :「はい!」 会議室を出て、すぐにトイレにかけこむ。 緊張のためか、汗がしたたり落ちてくる。 が、思わず顔がにやけてきた。 「もしかして、会社で貸してくれるの?  貸す気がなければ、金額は聞かないよね?」 マジで? マジで? やったぁ〜〜!!! 助かったかもしれない! 助かったかもしれない!!! 時間はまだ午後の3時くらいだったが、【早退】とホワイドボードに書いて会社 を出た。 とても気が楽だった。 いつもと帰る道は同じだが、周りの景色が違って見える。 家に着き、すぐに借金の総額を調べる。 418万円もある・・・。 これを正直に話すのは気が引ける。 なんとか、300万円台にしたい。 「よく調べたら、400万円もなかったです!」と言いたい。 信販系の「UCカード」の借り入れ(30万円)を除くと、「388万円」。 「よし、これでいこう!」 【次の日】 私 :「調べてみたら、388万円でした」 課長:「あほか、400万円も388万円も同じじゃないか!それよりも、この     件数はいったいなんだ?10件って。よくこんなに貸してくれたな」 私 :「すいません・・・」 課長:「とにかく、これで社長にお願いしてくるからここで待ってろ」 私 :「はい・・・」 【1時間後】 課長:「今、社長と話しをしてきて、今回は特別に会社からお金を貸してやるから、     それで借金を全部返して来い」 私 :「すいません・・・」 課長:「会社がお金を貸すってことは普通はありえないからな。しかも、借金の理由     がギャンブルだろ。絶対ありえないから、社長にお礼を言っておくんだな」 私 :「はい・・・、すいません・・・」 課長:「あと、今回は金額が金額だから、親には連絡するぞ」 私 :「連絡するんですか?」 課長:「お前、今の状況がわかってるのか!!何を今さらガキみたいなここと言っと     るんや!こっちは別にお前に辞めてもらっていいんだぞ!」 私 :「すいません・・・。分かりました」 課長:「で、どうする。松下から電話するか?」 私 :「・・・。はい、最初は自分から電話します。     両親とも働いているんで、夕方、電話します・・・」 課長:「よし!」 【夕方】 私 :「もしもし、おれ(声が震えている)」 母親:「一樹、どうしたの?」 私 :「お父さん、いる?」 母親:「まだ仕事から帰ってないけど・・・、なにかあったのかい?」 私 :「いや・・・。父さん、携帯持ってたよね?番号教えてもらえる?」 母親:「う、うん。090−・・・。本当に何かあったのかい?」 私 :「あとでかけなおす・・・」 そして、父親の携帯に電話をする。 私 :「もしもし」 父親:「もしもし」 私 :「一樹だけど・・・」 父親:「どうした、いきなり」 私 :「うん・・・」 父親:「なに、どうした?」 私 :「あの・・・、おれ、借金があるんだ」 ☆【最終回・後編】に続く。 <2002年4月現在>  ・借入先:11件       (DCカード、アイフル、アコム、オリックス、武富士、UCカード、        モビット、プリーバ、キャスコ、レイク、三和ファイナンス)  ・借入金:418万円(ローン含む)  ・毎月の支払い:294,000円 ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 最終回・後編 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 私 :「あの・・・、おれ、借金があるんだ」 父親:「借金?お前、何を言ってるんだ!」 私 :「だから・・・、借金があるんだ」 父親:「いくら?」 私 :「400万円・・・」 父親:「お前、自分で何を言ってるか分かってるのか?」 私 :「分かってる。それで、会社の上司に相談して・・・」 父親:「会社に言ったのか?」 私 :「うん」 父親:「あほか!!!お前、この不況に借金があるなんて言ったら、クビになっても     しょうがないだろ。なんで、お父さんに最初に言わないんだ?」 私 :「いや・・・、言いづらくて・・・」 父親:「ばかもの・・・・・・・。それで、会社に言ってなんだって?」 私 :「お金を貸してくれるから、それで借金を返せって」 父親:「貸してくれるって?400万円もか?」 私 :「うん・・・」 父親:「・・・」 私 :「あとで会社の上司が電話するって。金額も金額だから、親の印鑑も必要だから」 父親:「・・・」 私 :「また電話する・・・」 その後、課長が実家に電話をした。 私も家に帰ってから、改めて実家に電話をした。 母親は泣いていた。 父親も泣いていた。 次の日、会社に行くと契約書が用意されていた。 【松下一樹に『400万円』を貸す。金利は年0.5%。毎月給料から5万円を天引き。  返済終了日は2009年1月とする】 【ただし、本契約以降、再度借金をした場合、契約を破棄して全額一括で返済すること】 もちろん私はなにも言わずに印鑑を押して署名した。 契約を急がせるために、実家には速達で送った。 【2日後】 実家から父親の捺印と署名がされた契約書が会社に届いた瞬間、私の口座に会社から 『400万円』が振り込まれた。 それからはまさに電光石火。 財布に『400万円』を入れて、一つ一つ解約していく。 本当は自分で稼いだお金で完済したかったが、とにかく、これからは消費者金融と付き合 わないで済むと思うと本当に嬉しい! 消費者金融の店員からは、「なにか弊社にご不満でもありましたでしょうか?」と毎回 聞かれた。 「武富士」からは、「こんな大金どうされました?大丈夫ですか?」と、変な想像をさせ てしまったようだ。(おそらく、私がどこかに騙されていると思ったのか?) 全てを完済し終わったとき、『400万円』もきれいになくなった。 会社に行き、社長にお礼を言う。 私 :「ありがとうございました。これからは仕事を一生懸命やっていきます」 社長:「がんばれよ」 家に帰る途中、お米を5キロ買った。 「これからは節約をして、少しでも早く会社への借金を返さないと!!」 何年か振りの「前向き」な考えだった。 家に帰った瞬間、嬉しさが込み上げてくる。 「助かった〜!!  明日から生きていける。借金に怯えないで生活できる!!!  こんなに嬉しいことはない。  もう2度とこんな恐ろしい思いは嫌だ!!」 「パチンコはもうしない。パチスロも絶対しない!!」 会社で私の借金を知っているのは課長と社長だけだったので、何事もなかったように のびのびと仕事ができる。 毎日が快適。 入社して以来、はじめて「普通の社会人」になったような気がした。 土曜日・日曜日も最初はすることがなかったが、ビデオを借りたりして時間をつぶす。 あまりお金はつかえない。 でも、人間らしい日々を過ごせていた。 が、私の体の中に巣食った【ギャンブル中毒】は、1ヶ月後再び目を覚ます・・・。 ☆【エピローグ】に続く。  【エピローグ】はhttp://horobosu.com/newpage2.htm で本を買って読んでね。 <2002年5月現在>  ・借入先:1件 (会社から)  ・借入金:400万円  ・毎月の支払い:50,000円(給料から毎月天引き) ============================================================================ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆              □借金は身を滅ぼす□                 〜エピローグ〜 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ <2002年5月> 平穏な毎日。 朝起きて仕事に行き、帰りが早ければ同僚と酒を飲む。 ちょっと早く帰ってくれば、途中で本屋に寄って立ち読みをする。 土曜日は洗濯をしながら部屋を片付け、少しジョギングをしたりして体を動かす。 「これが普通の生活なんだ・・・」 本当にしみじみ感じる。 平穏な日々・・・。 土曜日、ジョギングから戻ってくると、郵便受けに1枚の封筒が入っていた。 中を開けると、 『UCカード 4月分のお支払い合計:71,243円。支払い期日:5月10日』 ああああ! そうだ!会社から金を借りるときに「UCカード」のことは隠してたんだ! やばい、どうしよう? 今、手元には1万円しかないし・・・。 もう売るものもない・・・、借金?いや、それだけはやめよう・・・。 でも、どうすればいいんだ? この後に及んで、課長に「よく考えたらUCカードもありました」って言えるか? 死んでも言えない・・・。 でも、本当にお金がない。 これは事実。 あと1週間もすれば支払日になり、その3日後には会社に督促の電話がかかってく るだろう・・・。 最悪・・・。 それだけは避けたい! ふと、危険な考えが頭をよぎる。 「7万円か・・・。パチスロで勝てば簡単じゃない?」 あああ・・・。 でも、これしかないよな。 うん、これしかない。 これしかない。 千円で勝つかもしれないし・・・。 (自分に対しての言い訳) でも、足はパチンコ屋へと向かっていた・・・。 【1時間後】 全財産の1万円はあっさり飲まれた。 その時、1ヶ月間隠れていた悪魔の心がささやく。 「今だと、どこの消費者金融の審査を受けても通るんじゃない?  だって、先月『400万円』を完済した男だよ!  1万円だけ借りてもうひと勝負!  だって、このままだと明日からの食費もないじゃん」 そうだ、食費もない。 1万円だけ借りよう。 食費の1万円だけ・・・。 【1時間後】 1度捨てたはずの「アコム」のカードが再び手元に戻ってきた。 1度完済しているので、申込はすんなり通る。 (「他からの借入件数」には自信を持って「0件」と記入) しかも、「借入限度額」が希望の10万円を大きく上回る【50万円】に設定された。 昔なら嬉しかったが、今では「毒」でしかない。 予定通りに「1万円」を引き出して、さっきまでいたパチンコ屋へと消えていく・・。 【30分後】 さらに【3万円】を借りる。 【2時間後】 さらに【5万円】を借りる。 結局、その日だけで【9万円】をアコムから借りた。 「明日の日曜日・・・、もう1回勝負・・・。  アコムを完済しないと大変なことになる・・・」 先月、会社で書いた契約書を思い出す。 【松下一樹に『400万円』を貸す。金利は年0.5%。毎月給料から5万円を天引き。  返済終了日は2009年1月とする】 【ただし、本契約以降、再度借金をした場合、契約を破棄して全額一括で返済すること】 借金がばれたら【全額一括返済】。 やばい、やばい、やばい・・・。 やばい・・・。 【次の日の日曜日】 朝からアコムに行って金を借り、パチンコ屋へ。 時間が経つにつれ、体の調子がおかしくなってくる。 「もうどれくらい借りたんだっけ?最初が1万円で、次に3万円・・・。  25万円?  まじで?  もう1回計算・・・」 ああああ。 やっぱり【25万円】も借りてる。 もうどうしようもできない金額。 どこで狂ったんだ。 昨日の朝までは快適だったじゃないか! 普通の生活をしてたじゃないか!! あああ。 ああああ。 なんで? なんでなの? なんでパチスロをするの? これが夢だったら・・・。 目がさめたら、土曜日に戻ってほしい・・・。 【月曜日】 朝起きるが気が重い。 でも、会社には行かないと・・・。 先週までの平穏な生活が嘘のようだ。 会社に着く。 私 :「おはようございます・・・」 課長:「おい!!松下、ちょっと来い!!」 私 :「はい・・・(なんだろ?)」 会議室に連れていかれる。 課長:「お前、また借りただろ?」 私 :「(あああああああああああああああ)・・・」 課長:「お前な、会社をなめちゃいけないって。簡単に調べられるんだから」 私 :「(汗が吹き出てくる)・・・」 課長:「(メモを取りだし)土曜日、アコムからちょこちょこ金を借りてるだろ?     1万円、3万円、5万円って、段々引き出す額が増えてるし」 私 :「(完全にバレてる)・・・」 課長:「なんか言えよ!!」 私 :「・・・、すいません」 課長:「しかも、日曜日もまた借りてるな!今度は5万、3万・・・。     お前、いったい何がしたいんだ?」 私 :「すいません・・・」 課長:「すいませんじゃわかんないだろ!!」 私 :「・・・、すいません」 課長:「(冷めた感じで)は〜、もうなにもかも遅いって」 私 :「すいません、すいません!もう絶対しませんから。すいません・・・」 課長:「社長はもうお前をあきらめた。無駄だってことだ」 私 :「すいません。すいません・・・。すいません・・・」 課長:「とにかく、今日はもう帰れ!」 私 :「すいません・・・」 【次の日】 会社の掲示板に張り紙が張られた。 【営業部・松下一樹は一身上の都合により、5月10日付けで退社することになり  ました】 この日の午前中だけ会社に来ることを許され、会社の同僚に挨拶をするが、辞める 原因は誰も聞かない。 もう会社中が「クビ」の理由を知っているのだ。 社長の温情により、【400万円の一括返済】は見逃してもらえた。 ただし、毎月30日、会社に返済のお金(5万円)を持って行かなければならない。 当然のごとく会社から連絡がいって、実家からは勘当された。 もう2度と広島に戻ることはないだろう・・・。 現在、バイトを2つ掛け持ちしながら、生きている。 とにかく、会社への借金【400万円】を返さないことには先に進めない。 前に進む気もないが・・・。 あと【325万円】残っている。 これから先、どうやっていけばいいのか・・・。                 【完】 ============================================================================ <人物紹介>  名前 :松下一樹(仮名) 生年月日:1976年3月12日 27歳(現在)   地元 :広島  略歴 :広島に生まれる。家族は父・母・姉。      中学・高校と学業の成績は常に上位。      部活はバスケット部に所属。      大学は仙台の某国立大学に合格。      1996年4月に仙台へと引っ越す。      なんとか4年で大学を卒業し、就職する。      2002年5月、【借金】が原因で会社をクビになる。  現在 :アルバイトを2つこなしている。  借金 :325万円(2003年8月時点)      毎月、前の会社に「5万円」返済している。 【借金は身を滅ぼす】 これが6年間で学んだことです。